天体議会の世界…天象儀館(2)2013年07月26日 20時57分12秒

理科少年たちの交友を描いた『天体議会』。

天体観測の場面は作中いろいろ出てきますが、プラネタリウムの描写は、この「広告燈」以外には出てきません。でも、当然ながら、少年たちはプラネタリウムに出かける折もあったことでしょう。

昨日登場した、現実の東日天文館は、こんな建物です。

(東日天文館の絵葉書・部分)

いろいろプラネタリウムの効用が謳われている中、「国民教化上に国防上に絶対必要なる国家有用機関」とあります。たしかに戦地では星座の知識が有用であり、そういう時代的要請があったのでしょうが、いかにもキナ臭いですね。

絵葉書の全体はこんな感じです。


富士山をバックに、二重橋や西郷さんと並んで「東京名所」扱いになっているのは微笑ましいですが、銅貨や水蓮が闊歩する「あの街」には、ちょっと似つかわしくない気もします。(建物も、何だかのっぺりした感じで、面白みに欠けます。)

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ですから、彼らが行きつけの天象儀館は、できればこんな外観をしていてほしい。


プラネタリウムの本場、ドイツの戦前の絵葉書です。

いずれも1920年代の表現主義建築の流れをくむ建物。
左は、ハノーファーのホッホハウス(1928年完成)で、最上階のドームがプラネタリウムになっていました。また右は、1926年にデュッセルドルフで開かれた「健康・福祉・体育大博覧会」(ドイツ語の頭文字をとってGeSoLei)のパビリオンとして作られたプラネタリウム。

いずれも建物は現存しますが、今ではドーム部分はプラネタリウムではなく、多目的ホールとして使われているようです。(昔はプラネタリウムが今よりずっと「偉い」存在で、国威発揚的意味合いもあったのでしょう)。
当時の機材は不明ですが、置かれていたのは、当然ドイツが誇るツァイス社の製品だったはずです。

ところで、左側の絵葉書の裏面には1942年の消印が押されています。
それと「例のあの人」の顔と、いかめしい鉄十字のスタンプ


「キナ臭さ」は、残念ながらこちらも逃れ難いようです。