天体議会の世界…水蓮の目から零れた碧い石(1)2013年08月23日 11時47分39秒

甲子園が終わり、ツクツクボウシが鳴きだし、今日は遅めの夏休み。
午後からは久しぶりの雨だと天気予報は告げています。
このところ不調が続いていたので、心と身体を休めろという天啓でしょうか。

昨日の「蚤ゲーム」は、ひょっとして滑ったかな?と危惧しつつ(コメント欄参照)、『天体議会』第1章における最大の山場に話題は移ります。

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始業式の朝から急に大きく腫れてきた水蓮の左まぶた。
鉱石倶楽部で出会った謎の少年は、水蓮の顔をじっと見て、「それは石が入っているせいだ。自分なら石を取り出せる」と自信ありげに言います。不審に思う銅貨と水蓮。しかし、ともかく試してみようということになり、水蓮は少年の「施術」に身をゆだねます。

 少年は水蓮のまぶたにあてていた指を、ゆっくり離した。そのとき銅貨は、碧く光る結晶が水蓮のまぶたから零〔こぼ〕れ、少年の手の中に落ちるのを見た。
「取れたぜ。」
 そう云って、少年は銅貨に結晶を見せた。(pp.32-33)


 澄みきった碧瑠璃〔へきるり〕の、柘榴〔ざくろ〕のひと粒ほどの結晶だ。澄明な碧さは、水平線を思わせる。
 雲ひとつない眩しい碧霄〔へきしょう〕との界〔さかい〕に、すうッとひと筋の洋墨〔インク〕を流したように弧を描いている碧。(p.33)


この描写、「すうッとひと筋の洋墨を流したように弧を描いている碧」というのは、結晶全体の青味を表現しているのだと思いますが、ここではそのイメージに形を与えるために、石そのものの中に、「ひと筋のインクを流したような弧」が認められるものを選んでみました。

 水蓮は首を振った。彼は自分のまぶたに入っていた結晶を掌にのせて不安気に眺めた。
「こんな結晶は見たことがないな。土耳古石〔ターコイズ〕のようにも見えるし、海柱石〔アクアマリン〕のようにも見える。どうしてこんな石が出てきたんだろう。妙じゃないか。」(p.35)



この謎の結晶は、水蓮から銅貨の兄である藍生(あおい)に託され、詳しく分析されるはずでしたが、その後(いささか滑稽な)「ある出来事」のために、それが不可能になります。結局、石の正体は不明のまま。そして少年の正体も。

「水蓮の目から零れた碧い石」の続編は、その「ある出来事」とともに、後ほどあらためて書きます。

(この項、間をおいて続く)