晩秋のテルリオン2013年11月16日 13時43分19秒

久しぶりにのんびり過ごす休日。快晴。
季節の足取りは実に達者なもので、晴れとはいえ、今日はストーブをつけました。

現在、記事が間遠になっているので、普段あまり記事にならないモノに改めて注目してみようと思います。たとえば、すぐ目につくところに置いてあるのに、なかなかこのブログに登場しないモノたち。(あまりにも日常に溶け込んでいるため、わざわざ記事を書く気にならないせいかもしれません。)

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上はトリッペンシー社(米)のテルリオン。太陽、内惑星、地球、月の位置関係を示す、日本語で云うところの「四球儀」です。これをぐるぐる回せば、季節の推移も一目瞭然という頼もしい教具。

(古びた台座。四季と黄道12宮、月名が対照されています。アメリカでは9月の途中から12月の途中までが秋と考えられているようです。)

この形に見覚えのある方もいらっしゃるかもしれませんが、以前、これの新しいバージョンが記事に登場しています。

■天文古玩・再考(7)…オーラリーと天球儀(1)
 http://mononoke.asablo.jp/blog/2011/04/30

戦後に作られた新バージョンは、ベークライトのアームにプラスチックの太陽でしたが、こちらは木製のアームに真鍮の太陽で、いっそうアンティークなムードが漂います。作られたのは20世紀初頭にさかのぼるので、文字通りアンティークと呼んでも差し支えないのでしょう。

(プレートには、カナダのパテントを取得した1908年の日付が入っています)

19世紀の古雅なテルリオンは、ウン十万円以上するので、私の手には届きません。しかし、このトリッペンシー社のものはわりと数が残っていて、eBayでもちょくちょく目にします。お値段もそれなりということで、5年前にいささか無理な算段をして、どうにか買い入れました。

ネブラスカ在住の売り手によれば、彼はさらにその4年前、地域の学校を統廃合する際のオークションでこれを入手した由。農牧地の広がるアメリカの片隅で、これまで幾多の生徒がこの教具に触れたはず…と思うと、なんとなく愛しい気がします。

(すすけた地球儀)

(素朴な仕組みですが、これぞ天体の動きを制御する心臓部)

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今回この品を「テルリオン Tellurion」と呼びました。以前の記事では「テルリアン Tellurian」や「テルリウム Tellurium」と書いた記憶もあります(トリッペンシー社自身は「プラネタリウム」と称しています)。

今、英語版のWikipedia(http://en.wikipedia.org/wiki/Tellurion)を見たら、見出し語としては「テルリオン」が採用されていて、「テルリアン、テルリウムとも書く。別名ロクソコズム(loxocosm)」とあったので、それに倣った形です。

テルリアンはSF等で「地球人」の意味で使われ、またテルリウムは元素テルル(Te)の英名と同じスペルになるので、誤解を避けるためにも、この種の天文教具はテルリオンと呼ぶのが穏当かもしれません。

以下、余談。
上の一連の単語は、いずれもラテン語の「tellus(大地、地球)」に由来しますが、ラテン語には同じ意味で、もう1つ「terra」という語があります。この2つは何か関係があるのかな? ひょっとしてローマの人も r と l の区別が苦手で、混用が起きたのかな?…と思ったら、同じ疑問がすでにYahoo知恵袋に投稿されていました。

紛らわしいですが、両者はまったく別の語根に発する単語のようです。

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