反覆する世界…カレイドスコープ ― 2016年06月08日 05時20分22秒
木味に魅かれて手にした万華鏡。
世紀の替わり目に、丸善で開かれた万華鏡の展示即売会で見つけました。
世紀の替わり目に、丸善で開かれた万華鏡の展示即売会で見つけました。

サインが入っていますが、記録を残さなかったので、作者は不明。
この万華鏡は、球状レンズが捉えた外界の景色を、三面の合わせ鏡によって視野いっぱいに増殖させるもので、オーソドックスな万華鏡とは異なり、筒を向ける対象によって、見えるものの形も色も、バリエーションは文字通り無限です。
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万華鏡は19世紀の初め、異能の科学者、デイビッド・ブリュースター(Sir David Brewster、1781-1868)が発明し、「カレイドスコープ(kaleidoscope)」の名も、彼の創案です。語源はギリシャ語の「カロス(美)」と「エイドス(形)」、それにスコープを組み合わせたもの。
写真の万華鏡は、特に「テレイドスコープ(teleidoscope)」と呼ばれるタイプで、1970年代に登場した新顔だそうです。しっかり調べたわけではありませんが、おそらく「遠く(tele)のものを像として取り込むカレイドスコープ」の意であり、テレスコープとカレイドスコープの合成語でもあるのでしょう。
こちらが接眼部。
よーく見ると、その中では光と形の饗宴がすでに始まっています。
カメラのレンズと覗き穴の距離が離れているため、写真には一部しか映りませんが、実際に覗くと、視野いっぱいに像が反復され、圧倒されます。
何ということもない光景も、このスコープを通して見れば、まったく新しい顔を見せてくれます。
これは色形の面白さを楽しむ玩具であると同時に、平凡な日常を異化する道具でもあるのです。
花が好きなら花、石が好きなら石、歯車が好きなら歯車、この筒さえあれば、お好みのままに、自分の愛する世界に沈潜できます。この筒を空に向けたことはありませんが、無限に居並ぶ月の群れを、今度眺めてみようと思います。
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