桜図譜のはなし(2)… 佐野藤右衛門『桜』(前編)2020年04月07日 17時20分48秒

桜と言えば花を賞するもの。
葉桜というのは、あまり芳しからぬものですが、葉桜の時期ともなれば、他の木々も若葉の装いをこらすのが自然の摂理で、これからは緑の美しい季節になります。

   ★

桜図譜の話を続けます。
最初に登場するのは、以下の本です。

(前回、でかでかと写っていたのは化粧箱で、中身はこんな表情です。左上は前の所有者が貼ったラベル。机の上では開くこともできないので、畳の部屋に持ち出して撮影しました。)

『桜 SAKURA; Flowering Cherries of Japan』
 〔15代〕佐野藤右衛門(著)、堀井香坡・小松春夫(画)、大井次三郎(解説文)
 光村推古書院、1961

(同書奥付。当時、1000部限定で出ました。)

(同目次・部分。総計101の種を収録しています。)

中身は下のような感じで、見開きの左側に解説、右側にアート紙に別刷りした図版を貼り込んであります。昔の美術書にまま見られる体裁です。

(品種名「胡蝶」)

(品種名「八重紅虎の尾」)

(同解説)

この印刷について、著者はこう述べています(字下げのない改行は引用者)。

 「本書の眼目はまず桜品〔おうひん〕の原色図版で、如何にして実物に忠実なものとして、最良の効果を挙ぐべきか、私の考慮はこの問題に集中されたのであります。

そこで考えられるのはカラー写真で、私は実際にあたってつぶさに調査し研究したのでありますが、遺憾ながら原色写真では桜の花をはじめ葉も枝も、すべて実物そのものの色彩光沢を表わすことが出来ないことを知ったのであります。

これより先私は実物の写生画の作成を思いたち、在洛の画家で元帝展審査員、現日展依嘱の堀井香坡氏及びその門下小松春夫氏を煩わし、父と私が蒐集した二百五十余種から代表的なものを選択し、前後二十数年かかって百六十余種の写生画を完成したのであります。

 この写生画を原色印刷に付して、その成果を確かめるために、私は色彩の異なるもの数種を試作せしめ、これを比較研究したのでありますが、十目の見るところ光村原色版印刷の技術が最もよく原画を表現し、他の追随をゆるさぬことを認識したのであります。それは原画の正確な再現に加えて、さらに生きた桜そのものの生彩光沢を発揮しているのであります。私の喜び、むしろそれは驚嘆といってよいものであります。そこで私は原色図版その他一切を光村原色版印刷所にゆだね、その発行を京都の光村推古書院に決定しました。」
 (著者序文「刊行に際して」より)

(「八重紅虎の尾」拡大)

(さらに拡大)

インクの退色もあるでしょうけれど、カラー印刷としては、今ならむしろ粗の部類で、そんなに大絶賛するほどでもないように思うのですが、60年前にはこれが最高水準の印刷でした。この間の技術の進歩をまざまざと感じます。

   ★

まあ、本書の場合は、純粋に図版を愛でるというよりは、著者の熱意にひたすら打たれるところに妙味があるのかもしれません。何といっても、本書は「この著者にしてこの著あり」としか言いようのないところがあって、その歴史性を珍重するに足りるからです。

(この項つづく)


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【閑語】

私の与太な予想はあっさりはずれて、安倍氏も緊急事態宣言を出しました。
当分、検束されることはなさそうですね。

ただ、検束はされないにしても、やってることは相変わらずデタラメだなあ…と思います。安倍氏は、コロナ対策に108兆円かけるのだと威張っています。国民1人当たりにすれば――お年寄りも赤ちゃんも含めて――ざっと100万円にあたります。このお金が流れ流れて、果たしてどこにいくのか?

例えば、我が家は現在5人暮らしなので、500万円相当の予算が割り振られているはずですが、直接的な恩恵は、今のところ例の布マスク2枚だけです。これはいったいどういうことか?

まあ、我が家のことは脇においても、今この瞬間、生活が立ち行かない人々の休業補償や生活保障に、108兆円のうち、いったいどれだけ割かれるのか?あるいは、医療崩壊が叫ばれる中、医療資源の拡充にどれだけ予算が充てられるのか? 

何だかんだ言って、最後は火事場泥棒みたいな連中の懐にみんな入ってしまうんじゃないかと、そのことが気がかりでなりません。というか、今の政権のやり方を見ていると、それ以外の可能性が思い浮かびません。(さらに言えば、政権そのものが火事場泥棒の集団のように私には見えています。)

理性のあるメディアは、その辺を特にしっかり報道してほしいと思います。

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