暦の歴史を振り返る ― 2023年04月16日 10時17分36秒
暦の作成には古来、大きな難所がありました。
それは太陽が示すサイクルと、月が示すサイクルがどうにも噛み合わず、両者を整合させた暦がどうしても作れなかったことです。
農事の基礎となる季節の循環は、基本的に太陽のサイクルで考える必要がありました。でも、暦を作る立場からすれば、月の満ち欠けを基準にしたほうがはるかに簡単でしたし、実際、その方が月明かりや、潮の干満に生活を支配されていた人々には、実用的でもあったのです。
この2つのサイクルを不都合なく両立させるために、昔から多くの人が知恵を絞り、「太陰太陽暦」という折衷案を採用した国も多くありました。もちろん日本もその一つです。
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夜が明ければ新しい一日が訪れ、日が重なれば季節はめぐり、やがて新しい年がやってくる…そういう意味で、我々は円環構造をした時の流れを生きています。
しかし同時に、過ぎ去ったときは二度と帰らず、赤ん坊は若者になり、若者は老い、やがて死んでいきます。宇宙もまた生成から衰退に至る道をたどり、いずれは無に帰すことを多くの神話が語り、現代の宇宙論もそれを支持しています。その意味で、時の矢は常に一方向に容赦なく飛んでいくものです。
暦学はもっぱら暦作成の技術を説くテクニカルな学問ですが、そこで生まれた暦は、上記のような多義的な「時」を表現するものとして、単なる参照ツールを超えた、人々のさまざまな思いがこもった存在です。そして、同じことは暦のみならず時計についても言えます。
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…というような、暦と時をめぐる人々の歴史を、美しく、印象的に表現しているページを、天文学史のメーリングリストで教えてもらいました。
■Jason Farago
Searching for Lost Time in the World’s Most Beautiful Calendar
(世界で一番美しい暦のうちに、失われた時を求めて)
2023年4月14日公開
https://tinyurl.com/yckb4rkv
Searching for Lost Time in the World’s Most Beautiful Calendar
(世界で一番美しい暦のうちに、失われた時を求めて)
2023年4月14日公開
https://tinyurl.com/yckb4rkv
15世紀に制作された『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』をメインに据えて、他にも多くの図版とともに、人々が時の流れとどう向き合ってきたか、その歴史を縦スクロールの動的画面を使って簡潔な、そして詩的な文章で説いています。
この問題に関心のある方は、ご一読されることをお勧めします。
さまざまな思索と感慨を誘われる内容です。
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