風を読む2011年01月29日 22時32分13秒

この間の謎の器具の正体はこれ。

光学機器にあらずして、風力計用の電気盤でした。
ロビンソン式風力計(既出。http://mononoke.asablo.jp/blog/2010/12/11/5573444)と対で用いて、リモートで計測値を読みとるための装置です。
 

小さな目盛りを読み取りやすいように、ものすごく分厚いレンズが正面にかぶさっています。
 
 
裏側にはガラスの小窓があって開閉できます。中には何やら機械装置が見えます。本体右側に見えるのが電極。


下は当時の理科教材カタログの1ページですが、右下の図のように、風力計との間に直流電源をかませて使用しました。



コメント

_ S.U ― 2011年01月30日 09時06分56秒

あ~っ、これ~っ、子どもの時に見たかったやつだー。
小学生の一時期、私は気象観測に凝っていて学校の百葉箱の鍵を取り仕切っていたのですが、風力計は使用できる状態で設置されておらず、そのメーター部分は図鑑のイラストでしかみたことがありませんでした。4つのカップがついた部分は、理科準備室の棚の上に見えましたが、メーターを見た記憶はありません。
 このメーターがたくさんついているのはイラストを見たときから気になっています。これは、どう読むのでしょうか。5桁の精度があるということでしょうか。どういう原理で測っているのでしょうか。40年前の疑問がぶり返されてしまいました。

 ネットで原理を調べても確実なことはわかりませんでしたが、私の予想では、回転に応じて本体から電気パルスが発生され(電源があるので、そこそこの電圧になる)、そのパルスの数を電気回路でカウントして積算表示しているのだと思います。あっていますでしょうか? また、いつ頃の製品でしょうか?

_ 玉青 ― 2011年01月30日 18時08分18秒

おお、百葉箱の主!!キング・オブ・理科少年。(沈着なS.Uさんが童心に帰っておられるということは、相当記憶に残る品だったようですね・笑)

手元の風力計本体には1960年製の銘板があり、電気盤もセットで買ったので、後者もたぶん同時期のものでしょう。

さて、肝心の動作原理なんですが、これがなんと言いますか、電気パルスや複雑な電気回路とは無縁の、ハッキリ言ってものすごいローテク装置です。

まず風杯が回転すると、今日の記事の写真の右端に見える歯車がゆっくりと回ります。それが10回転すると、その隣の歯車が1回転、それが10回転すると、そのまた隣が1回転…要するに、算盤玉の繰り上がり方式で、大きな数字を表示できるように工夫してあるわけです。

で、風力計本体の第一の歯車が回るたびに、写真の下に見える機械的接点が1回カチッと入るようになっています。電気盤側でもそれを拾って、電磁石の働きで1回カチッとレバーが動き、小さな歯車が動く仕掛けになっています。電気盤の5つのメーターは、本体の歯車と同じように、大きな数字の各桁(1000、100、10、1、0.1の各位)を示しており、全体で1つの数字を表しています。

手元の器具は上述のとおり戦後のものですが、こうした機械の構造自体は明治・大正の頃からほとんど進歩していないようです。

動作原理からもお分かりのように、ロビンソン式風力計は、リアルタイムで風速を表示することはできません。これは基本的に風杯の回転数だけをひたすら積算する装置で、表示単位はキロメートルです。実観測では、一定間隔をおいて観測した示度の差に風力計固有の係数を乗じて、実際の風の移動距離(風程)を算出し、それを両者の時間間隔で除して平均風速を出すという手順を踏みます。まあ、デジタルでピッ!ではなしに、そういう風に手間暇かけるところがエレガントなのかもしれませんね。

   +

ところで、ロビンソン式風力計の「ロビンソン」というのは、アイルランドを代表する天文台、アーマ天文台の台長を長いこと努めたトーマス・ロムニー・ロビンソン(1792‐1882)のことで、考案者である彼の名を取って命名されたということを、さっき知りました。この渋い装置、天文ともまんざら無縁ではないですね。

_ S.U ― 2011年01月30日 21時33分07秒

おぉ、40年来の疑問が解けましたねー。

 直結のメーターのほうは歯車式というのを想像していました。当時の手回し計算機やレジスターも似た仕組みでしたから。でも、たとえば、09999から10000にいっせいに桁が上がるときには相当な力が必要で、これがパワーステアリングでないとすると風力計にはちょっと負担が掛かりすぎるように思います。
 いっぽう、遠隔読み取りのほうが、増幅器を使わず古くさい電信機のような仕組とはちょっと意外でした。 電磁石のリレー回路は今日でも健在なので、古くさくても便利な物は便利ということでしょうけど。

 今はプロセッサで最後の答えまで出てしまいますが、メーターを読み取って、算盤や計算尺で演算し補正して数値を導く、というプロセスは、測定や研究を人間が行っていることを実感する上で大きな意味があると思います。

_ 玉青 ― 2011年01月31日 09時29分22秒

ぜひ40年前のS.U少年にも教えてあげてください(笑)。

>09999から10000にいっせいに桁が上がるときには相当な力が必要で、これがパワーステアリングでないとすると風力計にはちょっと負担が掛かりすぎるように思います。

先の説明はちょっと舌足らずでした。以下補足です。
風力計は歯車自体が目盛りを兼ねており、要は5個の歯車がギア比10:1になるよう単純に並んでいるだけなので、第2の歯車は第1の歯車の10分の1、第3の歯車は100分の1(以下同じ)の角度で常に回り続けており、トルクは恒常と言いますか、特に繰り上がりのところで負荷が大きくなることはないわけです。

_ S.U ― 2011年01月31日 22時04分13秒

>風力計は歯車自体が目盛りを兼ねて
 そうですね。恒常的、連続的に回せばよいのですね。これは、私のこだわりすぎでした。でも、その場合、数は多少読みにくくなりますね。

>40年前のS.U少年にも教えてあげて
 これは、もちろん、ありがたく伝えておきました(笑)。よほど感謝してるか、「今頃になってこのあほが」と思ってなければいいですが(笑)。

_ 玉青 ― 2011年02月01日 20時55分16秒

<風力計のまわった日>

「のどかな昭和のあの日。
少年が草むらで見つけた不思議な金属盤からすべての物語は始まった…。

かつて理科少年だった40年前の自分との、時を越えた奇妙な交流。
不思議なメッセージに込められた真の意味とは?
感動と衝撃のラストに、いま日本中が涙する!!」

2011年2月5日(土)より 新宿ピカデリーほか全国ロードショー(嘘)

_ S.U ― 2011年02月02日 19時32分02秒

いやあ、映画にまで。恐れ入ります。
これは「銀輪」の重みですね。今の液晶表示の風速計では、まったく映画になりません。

_ 玉青 ― 2011年02月02日 20時51分22秒

自分で書きながら、いろいろなカットやセリフが思い浮かびましたよ。
とりあえず脳内劇場で先行上映会を実施することにします(^^)。

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