ひっそりと眠る驚異の博物標本室 ― 2011年12月27日 20時45分03秒
この頃は5時ともなれば、辺りはとっぷりと暮れ、しかも空気が乾燥しているせいで、おぼろな感じがなくて、黒々とした夜空が頭上に広がっています。
今日、仕事帰りに西の空を見上げたら、駅舎の上にかっちりした三日月と金星が、並んで光っていました。何だかその脇に「足穂」と落款を押したいような、実に絵になる光景でした。
今日、仕事帰りに西の空を見上げたら、駅舎の上にかっちりした三日月と金星が、並んで光っていました。何だかその脇に「足穂」と落款を押したいような、実に絵になる光景でした。
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さて、1つ前の高校生の理科の話題、ヴンダーカンマーの話題から、三題噺的に話を続けます。
真に驚くべきものは、人知れずひっそりと、そして意外に身近な場所にあるのかもしれません。驚異の部屋に憧れる人、博物趣味に思い焦がれる人が、呆然となるような場所が、都内豊島区にあるのを発見しました。私もつい先日知ったのですが、見た瞬間、我が目を疑いました。
それは学習院高等科の標本保管室です。
リンク先には、掛図の紹介ページと、生物・骨格標本の紹介ページとがあります。詳細なデータはありませんが、いずれも驚くほど良質の資料と見受けられます。しかも、同室にはとびきりの鉱物標本も所蔵されていることを、下のページで知りました。きっと他にも知られざる逸品が収蔵されているのでしょう。まさに博物学の一大聖地。
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こうした品が、なぜ大学ではなく、高校という中等教育機関に所蔵されているのか、そのこと自体不思議ですが、その辺の経緯は下のページに略術されていました。
■旧制学習院歴史地理標本室コレクション:学習院大学東洋文化研究所
http://www.gakushuin.ac.jp/univ/rioc/vm/c01_zenkindai/c0104_hyouhon.html
それによれば、学習院所蔵の博物資料群は、そもそも旧制の学習院で、博物学教育に供するために設けられた「標本室」がルーツでした。これらの貴重な標本は、残念ながら関東大震災でいったん全て失われてしまうのですが、その後、新たに建てられた理科特別教場に再び「博物学標本室」が設けられ、昭和初年以来、熱心に標本の収集活動が続き、それが戦後になって同校高等科に移管され、現在に至るという流れです。
要するに、これらの標本は本来、旧制高校ないし大学に相当する高等教育機関が収集したものであり、コレクションの質と量の豊かさは、そのことの直接的反映です。
しかも、学習院は今でこそ一私立学校ですが、戦前にあっては(文部省ではなくて)宮内省が管轄する、皇族・華族のための特殊な官立学校で、国家の強力な後ろ盾がありましたし、何と言っても、博物学は「殿様の学問」として大いに奨励されましたから、そのコレクションの充実ぶりは当然といえるかもしれません。
とにもかくにも瞠目すべき空間であり、標本群です。
もちろん私は、即座に学校に電話をして、見学が可能かどうか問い合わせました。しかし残念ながら、学習院側の回答は「一般には公開していないので、見学は不可」というものでした。
まあ、今後何らかのルートで許可が得られる可能性もなくはないでしょうが、今のところそういうルートが思い浮かばないので、当面は想像の世界で、ひそかに探訪するしかありません。しかし、だからこそ謎めいた妖しい魅力がいっそう増す気がします。
ともあれ、学習院の生徒さんは、精一杯そのメリットを享受し、すべからく博物趣味の涵養に努めていただければと念願しております(←余計なお世話でしょうが)。
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