ヴァーチャル雪見(3)2017年01月22日 18時08分04秒



牧草地で乏しい草をはむ羊たち。
先ほどから降り始めた雪は、羊たちの背中にも積もり始めています。
雪は間断なく降り注ぎ、遠くの樹々はすっかり白く霞んで見えます。
暗く重たい空、冷たい大地。いかにも底冷えのする状景。


でも雪が降り止み、風も止んだ後には、一転して明るい世界が広がっています。
大きな木も小さな木も、皆いっせいに白い花を咲かせたようです。


静かな雪の林。時折ザザーと音を立てて、雪が枝から滑り落ち、地面に小山を作りますが、その後はふたたび静寂の世界。
真っ白な枝の複雑な分岐が美しく、まるで1本の木全体が、巨大な雪の樹枝状結晶のように見えます。


こんもりと綿帽子をかぶった大木と、雪の布団で覆われた地面。
「帽子」といい、「布団」といいますが、これには比喩以上の意味があります。
実際、雪の保温効果は相当大きいらしく、吹きっさらしの場所にいるより、雪洞の中の方が温かいのもそのためです(ぽかぽか温かいわけではないですが、外気温がぐっと下がっても、雪洞の中は氷点前後の気温が保たれます)。


空の色もずいぶん明るくなってきました。
こうして雪で守られたその下では、すでに春に向けて、植物や動物の生の営みが、徐々に始まっていることでしょう。


さあ、雪歩きをしているうちに、身体もすっかり冷えてしまいました。
そろそろ屋敷に帰りましょう。


あの門の向うに、温かい部屋と温かい飲み物が待っています。


コメント

_ S.U ― 2017年01月23日 08時34分30秒

中学生・高校生だった頃、大雪のあとで写真を撮りに出かけたことを思い出しました。私のターゲットはいくつかあって、雪の重みで垂れ下がった木の枝、南天の実、ヒヨドリ、サギなどの鳥、それから、屋根から雪が落ちる瞬間(これは一度だけものにしました)などです。

 大雪のあとにふらっと近所に出かけただけですが、結局今までその種類の撮影は2、3回しかできていません。私が何度も出かけた撮影のなかではささいなものですが、なぜか雪の撮影はとりわけ深い思い出になっています。

_ Nakamori ― 2017年01月23日 12時06分44秒

手元にあるスコットランドの本="Hostile Habitats Scotland's Mountain Environment"で気象を調べてみました。

それによるとスコットランドでは西と東で随分、降水量が異なるようで、概して西の方が多く、東で少ない傾向にあるようです。

撮影地のアバディーンは東に位置しますので、案外、冬季の降雪量は少ない場所なのかも知れません。

そんなことを念頭において写真を見ていると、もしかして撮影者はS.U様のごとく、「わーい、雪だ!」という感興の中で撮影されていたのでは、と想像したりしております(失礼)。さて、どうでしょうか?

_ 玉青 ― 2017年01月24日 07時07分25秒

○S.Uさま

いやあS.Uさんはリアル雪見派でしたか。
根っからの湯豆腐派が申すのも僭越ながら、心の柔らかい時期に、そういう経験をされたことは、とても貴重なことと思います。しかも被写体がなべて日本画の粋を尽くしており、実にS.U少年は、中高生にして風流の心を解する好漢だったのですね。(^J^)

○Nakamoriさま

お調べありがとうございます。
なるほど、風向の影響もあるのでしょうか、ちょうど山地をはさんで、東北地方の日本海側と太平洋側の違いのような感じですね。仰る通り、アバディーンのウィルソンが、雪をひたすら「美しいもの」として撮影して回ったのは、雪に苦しんでいない土地の者なればこそ…かもしれませんね。

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