天上大風(2)2010年12月13日 20時46分20秒

巻雲の動きを観測するといっても、1箇所ではもちろん十分なデータは得られません。
そのために国際協力が求められました。科学の分野における国際協力は、まず天文学で始まり、気象学もそれに続いた形です。


↑データ提供に協力した測候所と観測責任者のリスト。
地元のスウェーデン以外に、ノルウェー、デンマーク、イギリス、オーストリア=ハンガリー、ベルギー、スペイン、フランス、ポルトガル、ロシア、スイス、トルコ、そしてドイツ領邦のバーデン(統一ドイツを構成した小国家の1つ)が参加しています。


↑この図は、当時の気象観測項目、即ち気温、気圧、風向、風力、雲量、降雪状況の時系列変化を、1枚のグラフに表現したものです。スウェーデンのウプサラ測候所における、1876年2月18日午前6時~21日午前4時にいたるまでの約3昼夜の状況。
気温と気圧が美しい対照的なカーブを描いていること、そして気圧の変化につれて風向きがぐるっと変わっていることが読み取れます。(シンプルながら力強い図ですね。)

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さて、こうした観測網を使って、ヒルデブランドソンは、ヨーロッパ上空の雲の動きを、1875年から76年にかけて、約1年半にわたって追い続けました。この本は、それを53枚(すなわち53日分)の気象図にまとめたものです。

せっかくですから、125年前の今日、1875年12月13日の図を見てみます。

曲線は等圧線。気圧の単位は水銀柱ミリメートルで、標準大気圧=760mmHGを基準として、それよりも低圧部は点線で、高圧部は実線で表現されています。

↑図中の赤い矢印が巻雲の動き。

この日は、ちょうどスウェーデンの上空を、大量の巻雲が次々に南下していきました。

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真っ白な雲の一団が流れていった125年前の空を思いつつ、さて日本はといえば…ああ、今宵は全国的に雨模様ですね。雷の所も、雪の所もある様子。幸い、地球の息吹はまだ健やかなようです。