天上大風(3)2010年12月14日 19時42分22秒

おまけとして、この本の来歴を書き付けておきます。

これはイギリスの王立気象学会の旧蔵本です。たまたま同じ本がダブったために、こちらの方が処分されたようです(司書さんが記したらしい廃棄メモが本に挿入されています)。

さらに本への書き込みを見ると、同学会は1901年にこの本を寄贈されたことが分かります。寄贈者はFrancis Druce(1873-1941)。本には、彼のサインと共に、ドゥルース家の紋章(上の写真)が貼り込まれています。

といっても、ドゥルースはあまり有名な人ではないでしょう。もちろん私も知りませんでした。ネット情報によれば、ドゥルースは英国における良質のアマチュア学者の伝統を受け継いだ人のようです。若い頃はオックスフォードで学び、家業の会社経営のかたわら、気象学と植物学に入れ込んで、植物学関連書籍の蒐集家としても知らたそうです。1910年、健康問題のために会社経営から引退した後は、その経歴を買われ、王立気象学会やリンネ協会の会計担当役員をつとめました。

まあ、こういうのは、どうでもいいと云えばどうでもいいことです。
そもそも図書館廃棄本というのは、古書市場ではマイナス評価しかされないので、こういう来歴を書きつけたからと云って「お宝自慢」には全くなりません。

しかし…しかし、ですよ。
ドゥルースが、最期はドイツ軍の空襲によって不慮の死を遂げたと知るとき(哀れなドゥルース氏!)、あるいは王立気象学会の暗い書庫を思うとき(見たことはありませんが、たぶん暗いでしょう)、人は1冊の本を手に、そこに何がしかの感興を催すのではありますまいか?

少なくとも、私はそういう「ささやかな歴史性」に心を惹かれますし、そこにこそ、単なるデータではない「モノとしての本」の良さもあるのではないか…という気がします。

■参考:http://www.nature.com/nature/journal/v147/n3736/abs/147702a0.html 他

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さて、今夜はふたご座流星群。
天気の方がちょっと…気が揉めますね。
地球の息吹がどう作用するか?