「鉱石倶楽部」の会員章(後編)2017年08月13日 10時57分38秒

アメリカで血なまぐさい争乱が起きています。
アメリカに限らず、争乱の絶えたためしがない人間世界ではありますが、穢土を厭離し、浄土を欣求するのもまた人間です。逆説的に、だから争乱が絶えないのかもしれませが、そんな穢土の真ん中にあって、無言の鉱物に、深い救いを感じる人も少なくないでしょう。一種の「鉱物浄土」です。

   ★

さて、アメリカの鉱物クラブのバッジを眺める後編。
アメリカの鉱物趣味人のセルフイメージといえば、何と言ってもこれです。


ハンマー、つるはし、スコップの三種の神器。
アメリカの鉱物趣味人の特質は「自採」にあり、「鉱物趣味」と「鉱物採集趣味」はイコールで結べる…というのが、少なくともちょっと前までの共通認識でしょう。

もちろん、アメリカはミネラルショーの本場で、趣味人ともなれば、会場で珍品の品定めに余念がないでしょうし、逆に日本でも、昭和の鉱物愛好家は、こつこつ自採する人が多かったと思います。

しかし、現今の日本では「鉱物はお金を出して買うもの」という観念が一般化し、「一切自採しない鉱物ファン」が圧倒的に多い現況からすると、この「ハンマーとつるはしこそ、我らがアイデンティティ」という、アメリカの鉱物ファンの強烈な自負は、いささかまぶしく感じられるのではないでしょうか。


とにかくバッジに描かれた彼らは、掘って掘って掘りまくります。

(「フープ博士」の物語に登場しそうな、陽気な鉱物採集家)

彼らは山でも、


海でも、


絶えず鉱物探しに余念がありません。


上のバッジを見ると、そんな彼らのセルフイメージの背後には、ゴールドラッシュ時代の金採掘人のイメージもあることが伺われます。これは単なる言葉のアヤではなくて、実際、アメリカ西部には、今もそんな探鉱者の流れを汲む男たちがいて、「現代の金」たる希少な隕石や鉱物探しに余念がないことを、以前の記事で引用しました。

■火星来たる(3)

要するに、彼らの一部は「Mineralogist(鉱物学徒)」である以上に、「Miner(鉱夫、探鉱家)」気質の者たちであり、このことも日本の鉱物趣味人からすると――購入派はもちろん、自採派にとっても――少なからず肌合いが違って感じられる点でしょう。(確かに、日本にも「山師」の伝統はありますが、それが今の鉱物趣味に多少なりとも影響を及ぼしているのかどうか、寡聞にして聞いたことがありません。)

   ★

最後に、個人的にいちばん嬉しかったバッジ。


1979年、カリフォルニアのサクラメントで、ヒスイに特化したフェアがあったらしく、そのときに配られたバッジです。「碧い玉」のバッジは、まるで私のために誂えてくれたかのようで、今後外出するときは、これを常に胸に着けることにします…というのは嘘ですが、何かのアイコンとして使うかもしれません。

コメント

_ S.U ― 2017年08月13日 18時30分16秒

なるほど。ツルハシはアメリカっぽいですね。私には、チャップリンの「黄金狂時代」の映像が強烈です。
 
 ところで、確たる証拠はないのですが、かつて日本には、河原とか山道とかにごろっと転がっている石を探して持って帰り、庭石や敷石にする「趣味」が存在したのではないでしょうか。私のイメージでは、農村の広い屋敷に住む主人が、時々、荷車を引いて周辺の山河に出かけて行って、夕方岩石を2,3個持って帰ってきて庭に並べて楽しむといったようなものです。

_ 玉青 ― 2017年08月14日 07時21分48秒

あ、ありそうですね。まあどこまで普遍的な趣味だったかは分かりませんが、そんな趣味人もたしかにいたことでしょう。
なんでも鑑定団でも、ときどき野外採石趣味の人が登場して、家人に露骨に煙たがられている姿が紹介されますが、庭石ならまだしも、屋敷内に持ち込まれると本当に困りますね。

_ S.U ― 2017年08月15日 09時28分25秒

>家人に露骨に煙たがられている
 話がちょっとずれますが、あの「うちのお父さんは困ったもので・・・本当にやめてもらいたい」とか言いつつ、テレビで自分が紹介されるのに同意する家族というのは微妙なもので、本当にほほえましいです。

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