3-D宇宙…『DEEP SPACE 3-D』(1977)2017年12月31日 09時43分47秒

(昨日のつづき)

アメリカで出た立体星図の中身を見てみます。

作者のDavid Chandler氏については、何も知るところがありませんが、この星図が出た前の年、1976年に天文教具の制作・販売を手掛ける小さな会社(David Chandler Company, Inc.)をカリフォルニアで起こした人です。1992年にはビリー・チャンドラーさん(夫人?)が同社の経営者になっているので、既に故人かもしれません。


昨日の写真は外箱で、内容は星図カード+解説カード+3-Dビュアーから成ります。


20.5×12.5cmの縦長のカードの上部に星図が、下部にその立体図が印刷されています。表現されている恒星は4.5等級まで。星図カードは全部で14枚あり、これで南北全天をカバーしています


元となったのは、アメリカでは1964年に出版された、チェコの『ベクバル星図』(1950年分点)で、星々の遠近感が出るよう、コンピューターで計算して作図しています。説明がないので、その詳細は不明ですが、実際の見え方と星図を突き合わせて考えると、どうやら肉眼で見える、距離100光年未満の恒星に注目して、それらが背景から手前に浮き出るように、視差を付けているようです(したがって100光年より遠い星は、すべて黒い背景にべたっと一様に張り付いているように見えます)。


日本の『立体で見る星の本』では、1000光年までの恒星を距離別に5つのグループに分けて、その相対的遠近を表現していましたから、両者のコンセプト(や見え方)はかなり違います。まあ、それぞれ一長一短あるでしょうが、チャンドラー氏のこの作品は、同じ「神の視点」にしても、親しみやすい「ご近所の神様の視点」といった感じでしょうか。

(発売当時は、こんな風に外箱に直接切手を貼って発送していたようです。)


(この項、間を置きながら続く)

  ★

年末ですが、スペシャルなことは何もなく、こんな風に通常運転で1年を終えます。
むしろ、だからこそ良いのであって、来年もごく自然体で臨みますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは皆様、どうぞ良いお年を!

コメント

_ S.U ― 2017年12月31日 11時09分35秒

 星座を立体視するというのは、人々の長年の夢だったでしょうね。これらの星図をハーシェル父子や山片蟠桃に見せたいものだと思います。
 日本の『星の本』は、星座線付きがあるのが秀逸で、立体視をすると虫取り網か枯れ草のような独特のワサワサ感が出るのがよろしいと思います。

 本年も一年ありがとうございました。ご助言をいただいた日本科学史の件がまだ中途になっていますが、来年発展することを期待したいと思います。よいお年をお迎えください。

_ 玉青 ― 2018年01月01日 09時45分04秒

>ハーシェル父子や山片蟠桃に見せたい

いやあ本当ですねえ。
果たして彼らの口からどんな感想が聞かれるでしょうか?
実際に聞くことができないのは残念ですが、我々にはそれを自由に空想する楽しみが残されていますから、お屠蘇気分に任せて、お歴々を幽冥界よりお招きして『仮想・新春大放談スペシャル』を脳内で再生してみるのも一興かもしれませんね。(^J^)

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