ウソかマコトか2018年04月01日 10時18分49秒

エイプリールにちなんで、何か出まかせを言おうかと思いましたが、特に気の利いた嘘も思いつかないので、嘘にちなんで、こんな品を載せます。


『錯視(Optical Illusions)』と題されたシガレットカードのシリーズ、全25枚。
1923年に、イギリスの煙草メーカー、オグデンズ社が発行したものです。


適当に抜いた4枚のカード。左から順に、

*No.6「欺瞞的な形」 …5切れのバウムクーヘンのような形は、全て同形同大ですが、下の方が細長く見えます。
No.2「長短の線」 …有名な「ミュラー・リヤーの錯視」。矢印中央の線分は同長ですが、右のほうが長く見えます。
*No.11「本と筒」 …子供のころ、紙筒を掌の脇にくっつけて、両目を開けたまま覗くと、手のひらに穴が開いて見えるという遊びをやりましたが、あれと同じもの。
*No.9「遠近法に置かれた柱」 …3本の柱は同長ですが、奥の方が長く見えます。

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この品を載せるにあたって、演出として、眼球模型と並べようかと最初は思いました。


でも、よく考えたら、下の方が一層適切だと気づきました。


そう、錯視とは目で見るものではなくて、脳で認識するものですね。

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ところで、錯視って本当なんでしょうか、嘘なんでしょうか?

物理的実体こそマコトと考えれば、それと異なる知覚経験である錯視はウソです。
でも、ヒトの知覚システムは、一定の条件下で錯視を見るように構成されているので、ヒトの主観的経験としては、何のウソ偽りもなく、錯視こそマコトです。「たしかにこの2本の線分は、物差しで測れば同じ長さだが、私の目にはこっちの方が長く見える」という陳述の正しさを疑うことはできません。

モノの世界と心の世界の絡み合いは中々ややこしくて、うっかりすると直ぐ迷路にはまってしまいます。錯視現象はそれを考える恰好の手掛かりであり、このシガレットカードなんかは、さしずめ迷妄界にある人を導く、有り難い御札かもしれませんね。