中世がやってきた(1)2018年04月28日 07時46分15秒

理系アンティークショップ、すなわち天文や博物趣味にかかわる古物を扱うお店は、往々にしてその手の品とともに、宗教アンティーク(ここでは主にキリスト教の)も扱っていることが多いようです。

科学と宗教はしばしば対立するものとされるので、これは一見不思議な光景です。
でも、両者は等しく「目に見える世界の背後を説くもの」であり、いわば「異世界を覗き見る窓」ですから、この二つの世界に共に惹かれる人がいても、不思議ではありません。かく言う私も、理科趣味を標榜する一方で、妙に抹香臭いものを好む面があります。

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「中世趣味」もその延長線上にあります。

中世というのは、日本でも西洋でも、戦乱と疫病に苦しんだ暗く冷たい時代で、そこにお伽チックなメルヘンとか、深い精神性とか、侘び寂びの幽玄世界を重ねて、むやみに有り難がるのは、現代人の勝手な思い込みに過ぎないというのも事実でしょう。

(日本の中世文学史家である、田中貴子氏『中世幻妖』(幻戯書房、2010)は、「近代人が憧れた時代」の副題を持ち、帯には「小林秀雄、白洲正子、吉本隆明らがつくった<中世>幻想はわたしたちのイメージを無言の拘束力をもって縛りつづける」とあって、その辺の事情をよくうがっています。西洋でも事情は似たようなものでしょう。)

…と、予防線を張ったところで、やっぱり中世って、どこか心惹かれるところがあるんですよね。これは子供時代からの刷り込みもあるので、ちょっとどうしようもないです。

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そんな中世趣味の発露が、見慣れた光景の向こうに潜んでいます。
わりと最近わが家にやってきたもので、理科趣味とも天文趣味とも縁遠い品ですが、一種のヴンダー趣味ではあるし、これまた前から欲しいと思っていたモノなので、この辺で登場させることにします。

(この項つづく)