星のお勉強…聖書と星2018年06月30日 16時42分52秒

天文ゲームには、教育的意図をもった「お勉強」のための品も含まれます(※)
ちょっと毛色の変わったところでは、こんな「お勉強」ゲームも。



Helen S. Evans(著)
 「Bible Astronomy Game」
 The Glad Tiding Publishing Company(米インディアナ)、1928

聖書には天文に関する記述がいくつもありますが、そうした聖書の文句とともに、最新の天文学の知識を学ぼうという、何となく堅苦しいゲームです。

外箱の記載によれば、これは「天空の驚異」を伝える「教育的、感動的、聖典的」なゲームであり、「高校生の若者たちによるクラブ合宿や家庭集会」で遊ばれることを想定しているようです。(ここでいう「クラブ合宿(Societies camps)」や「家庭集会(Home circle)」は、たぶんYMCAのようなキリスト教的背景のあるものでしょう。) 
また、著者のヘレン・エヴァンスについては、他に『聖書の少年と聖書の娘たち』という著作もあったと記されています。

そう聞くと、やっぱりちょっと敬遠したくなりますが、こんなふうにゲームにまでキリスト教の影響が色濃く出ているのは、いかにもアメリカ的。

   ★

トランプで、「ゴー・フィッシュ(Go Fish)」というのを遊んだ方も多いでしょう。
互いに手札をやり取りしながら、同じ数字を4枚集めて場に出していくというのが基本ルールで、あとは手札を先になくす「早上がり」式で競ったり、4枚組をできるだけたくさん作る「ポイント制」で競ったり、遊び方のバリエーションはいろいろです。

この「聖書天文ゲーム」の遊び方は、この「ポイント制 ゴー・フィッシュ」と同じです。


カードは全部で71枚。
カードの左肩を見ると、1-A、1-B、1-C、1-D…から始まって、16-A、16-B、16-C、16-Dまで並んでいます。要は、1~16までのグループがあって、各グループはそれぞれA~Dの4枚から構成されているわけです(このゲームではグループのことを「ブック(book)」と呼ぶので、以下そのように呼びます)。


まずブック1(太陽)ブック2(月)はこんな顔ぶれ。
ちょっと読みにくいですが、太陽の1番カードは、太陽を「11年周期の変光星で、不思議な化学的力を持つ」と説き、「(神は)大きい光に昼をつかさどらせた」という創世記の一節を引いています。
(太陽を変光星とはあまり呼びませんが、厳密にいえばその通りで、これは正しい記述です。また恒星内部の熱核反応が理論化されたのは、1930年代以降のことなので、このゲームが出た当時は、そのパワーの源を「不思議な化学的力」と呼ぶほかなかったでしょう。)

そして2番カード以下は、「太陽の直径は86万マイル」「太陽の移動速度は秒速11マイル」「太陽系の仲間は惑星、衛星、小惑星を含めて約500個」と続きます。

同様に月の1番カードは「山の多い、荒涼とした空気も水もない球体」という説明と、「夜をつかさどらすために(神が作られた)月ともろもろの星」という詩篇の一節が書かれ、2番カード以降は、「月の直径は2164マイル」「月までの距離は24万マイル」「月の公転周期は29.5日」という事実を記しています。

こんな感じで、ブック3~10は惑星を、ブック11~12は星座を、ブック13~14は1等級以上の恒星を、ブック15は恒星に関する事実を、そして最後のブック16は光の性質をとり上げて、それぞれ天文豆知識を伝授しています。

(昼を支配する太陽、ベツレヘムの星、北極星等を描いたスペシャルカード)

カードの枚数は、これだけだと4×16=64枚にしかなりませんが、他に7枚のスペシャルカードがあって、ゲームに変化を与えています。(プレイヤーは、各ブックを4枚揃えると10点(太陽と地球のブックは20点)もらえるほか、スペシャルカードを引くと10点ボーナスポイントがもらえたりします。)

   ★

聖書の引用を除けば、あとはまともな天文知識ですから、そう身構える必要もなさそうですが、いかんせんモノクロで文字ばっかりなので、見た目からしてあまり面白そうではありません。

ただ、見方を変えると、天文ゲームのバリエーションを示すものとして、そこに色物的面白さがなくもありません。そして、19世紀前半まで盛んだった「自然神学としての科学」―被造物の科学的探究は、創造者たる神を讃嘆する篤信の行為に他ならない―という観念が、100年後のアメリカでも、依然健在だった(らしい)ことも窺えます。


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(※) 本当は、こんなふうに学習と遊びを対立するものと捉えるべきではありません。「本来、学ぶとは楽しいことなんだ。たとえ苦労があっても、それだけの手応えを伴うものなんだ」と考えられた時代も長く、またそう考える人も多かったはずです。ただ、教育制度の歴史と同じぐらい、勉強嫌いの子どもの歴史も長いので、ここでは子供に嫌われがちなタイプの学習を、特に「お勉強」と呼んで区別することにします。

コメント

_ S.U ― 2018年06月30日 21時16分57秒

思い出すに、小学校の時に学校で買ってもらったり、学習雑誌の付録についていたカード教材で、理科や社会科に関するものは、「お勉強」には違いありませんが、それでも、絵入りで一連のカードの体裁になっていることでそれなりに楽しめたように思います。

 もう少し長じてからは、露骨に丸暗記強制タイプのものが出てきて、リングで止めた紙片のいわゆる単語帳、赤い字で答えが書いてあって赤フィルターを透して問題を読むタイプの物(漢字とか歴史とかだったと思う)、こういうのはくそ面白くも何ともありませんでした。この聖書版天文知識は、一応、絵札があるようだし、丸暗記強制でもないので、まだいいのではないでしょうか。

_ 玉青 ― 2018年07月01日 15時50分09秒

まさに「一応は」ですね。改めて思うに、このゲームにおける天文知識は、結局のところカードを飾る添え物に過ぎず、遊び方そのものに内在していない(=同じ遊びは普通のトランプでもできる)というのが弱点のようです。

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