巨大球儀の胎内めぐり2008年09月07日 22時06分08秒


1900年のパリに登場した巨大天球儀について調べようと思って、H.C.キングの『Geared to the Stars』を見ていたら、肝心のことは分からずじまいでしたが、こんな図が載っていました(p.321)。

地理学者のジェイムズ・ワイルド(1812-87)が作った「モンスター地球儀」です(以下、同書の記述より抜粋)。

この巨大地球儀は、1851年のロンドン大博覧会でお目見えし、その後1861年まで存続しました。直径60フィート(約18メートル)といいますから、人間の大きさを基準にすると、この図はかなりリアルな描写のようです。

球の内部には、大洋と陸地が石膏によって立体的に―ただし裏返しに―造形され、リアルな彩色が施されていました。入口から入った観客は、4層になった見物台を順次上りながら、我が地球の驚異に目を見張るという仕掛けです。ただし、この構造には大きな欠点もありました。

「ワイルド氏の大発見。氏によれば、地球内部はアガシ説のようにガスで満たされているのではない。バーネット説のごとく火で満たされているわけでも、フーリエ説のように水で満たされているわけでもない。否、ワイルド氏は今やわれわれに、こう教えてくれている。地球内部は巨大な階段で満ちているのだと。」

同時代のパンチ誌が皮肉ったように、内部の構造物による死角が多すぎて、パノラミックな眺めが殺されてしまったのです。商策上できるだけ大勢の観客を入れようとして、しくじったのでしょう。

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さて、上掲書のページを繰ると、他にも類例が載っていて、そこから「巨大球儀の歴史」というテーマが自ずと浮上してきます。

で、それらを見ていると、なぜか人は球儀を外から見るだけでは飽きたらず、中に入りたがるんですね。これを安易に子宮願望と言っていいのかどうかは分かりませんが、何かしら人の心に深くアピールするものがあるのは確かでしょう。

(この項つづく)