ジョバンニが見た世界…銀河のガラス模型(3)2010年06月10日 19時22分25秒

先日書いたように、この銀河のガラス模型は、実際に作られたことはないと思います。
たしかにガラスキューブの中に造形された銀河模型はいろいろあるのですが、モデルの全形がレンズ型をしているものは、おそらく人々の心の中にしか存在しないのではないでしょうか。

したがって、以下では「心の中にあるモデル」の具体化として、いろいろな描き手による作画例を見てみようと思います。

まずは、ますむらひろし氏。
ますむら作品の特徴は、登場人物がすべて猫の姿で描かれていることで、先生もやっぱり猫です。

(出典:ますむらひろし(著)『銀河鉄道の夜』、朝日ソノラマ、第6版1989(初版1985))

「中にたくさん光る砂のつぶの入った大きな両面の凸レンズ」と原文にある通り、これは相当大きいです。巨大と言って差支えありません。こうなると手で持ち上げることはできないので(推定重量は200kg超)、専用の台に載っているのでしょう。

これに次いで大きいのが、小林敏也氏のイメージです。

(出典:小林敏也(画)『画本 宮澤賢治/銀河鉄道の夜』、パロル社、1984)

こちらの推定重量は約40kg。持てない重さではありませんが、片手で持つのは相当大変です。この先生はかなり肉体を鍛錬されているのだと思います。

全形はますむら氏のモデルとよく似ていますが、最大の違いは銀の粒の分布です。ますむら氏のモデルは、銀の粒が一様に散っていますが、小林氏のモデルは、凸レンズの中に更にレンズ形の銀河が造形されています。

これは、ますむら氏の解釈に理があると思います。賢治が意図したのは、星の分布が一様でも、見る方向によって見え方に濃淡が生じる事実の説明なので、そのためには、ますむら氏のモデルの方が適切です。ガラスの中に改めて銀河の形状を再現するのであれば、ガラス自体がレンズ形をしている必然性はありません。

小林氏の描かれたこの本は、数ある『銀河鉄道』の絵本の中でも、そのリアリティにおいて出色の出来映えだと私は思っていますが、上の絵はそういう訳で、「真」からやや遠ざかっている印象を受けます。(「現実の姿」と「表現のリアリティ」というのは必ずしも一致しないかもしれませんが…。)

(作画の話、さらにつづく)

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