人体模型の面相学(3)2011年08月22日 20時57分27秒

ひょっとしたら、この話題で、「天文古玩」は多くの読者を失うことになるのかもしれません。しかし途中でやめることはできません。乗りかかった船です。人体模型が苦手な方も、観念してお付き合いいただければ幸いです。

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まずはお馴染みの、比較的最近の人体模型2体。別の業者から別の時期に出品されたものですが、双子のようによく似ています。現代の製品は、たとえ個体差はあっても、その差はごく小さいのが一般的です。
 

 

下も同系統の作品。ちょっとボンヤリした表情で、無個性な、いわば万人向けの顔立ちです。
 

紙塑製時代にも先行例はあって、たとえば↓のような顔立ちが、上記タイプの祖型ではないかと思います。塗りが粗雑なせいで、受ける印象はだいぶ違いますが、目鼻立ちはよく似ています。
 

さて、この辺までは何の変哲もない話。しかし、「人体模型とは所詮こういうものさ」と決め込んでいらっしゃる方は、下の模型を見て、認識をぜひ改めていただきたい。
 

うーん、この素っ頓狂な少年はいったい何なんでしょう。職人さんの本気具合を疑いたくなりますが、でも別に人を笑わそうと思って作ったわけではないでしょう。こういう人体模型が、立派な商品として通用していた時代もかつてはあったのです。

この顔を最初見た時、「何て下手くそな造形だ!!」と思いましたが、でも、ひょっとしたら、日本人のリアルな顔立ちを追求したらこうなった可能性もあるぞ…と思い直しました。昭和20年代には、こういう顔立ちの少年が確かにいたと思います。

少なくとも、この作品は、欧米では絶対に作られることのない、人体模型の日本的展開の好例だと言えるでしょう。

(この項つづく)