ジョバンニが見た世界「時計屋編」(9)…宝石を乗せて回る硝子盤(第4夜)2011年12月07日 22時39分24秒

前回のつづき。
「…いろいろな宝石が海のような色をした厚い硝子の盤に載って 星のようにゆっくり循(めぐ)ったり…」
この一節からオーラリーをイメージしたという話を書きます。

まず、海のような色合いの盤上をゆっくりと星が回る…という部分から連想した品はこれです。

(出典:Bruce Stephenson et al, THE UNIVERSE UNVEILED. Cambridge University Press, 2000)

Pieter Isenbroek 作のグランド・オーラリー(18世紀)で、現在はシカゴのアドラー・プラネタリウムが所蔵しています。青と金の対比が実に美しい逸品。
この回転盤をガラスで作るのは、ちょっと難しい注文ですが、もしそんな品ができたら素敵ですね。

   ★

そして、宝石が星のように回る…という部分からの連想はこれ。


Science Art Company という、アメリカのメーカーが作った現代のオーラリーです。
木製の台座、歯車を覆うガラスのドーム、そこから生えている樹状の角。クラシック・モダンな雰囲気を漂わせる不思議な作品です。


このオーラリーは独自のメカニズムにより、太陽の周りを各惑星が、正確に公転周期の比に合わせて回ります。(動力は電池。1地球年は75秒に設定されています。)

太陽と惑星は、それぞれの色をイメージした貴石、半貴石を削り出して作られており、太陽はオレンジ方解石、水星は青めのう、金星はアベンチュリン、地球はラピス、火星はカーネリアン、木星は縞めのう.....という具合。


この角度からだと、各惑星はてんでバラバラの軌道を描いているように見えますが、実際には、ほぼ同じ平面(黄道面)を行儀よく回ります。

   ★

どうでしょうか、ジョバンニはこうして太陽系に一瞥を投げかけてから、星座絵や星座早見によって表現される恒星世界へと旅立った…というふうに考えてみては?

コメント

_ たつき ― 2011年12月07日 23時05分07秒

玉青様
素晴らしいです。ここのシーンはこれで決定でしょう。私の脳内銀河鉄道の夜もこれに書き換えます。
それも玉青さんのおかげですね、天文古玩に来なければオーラリーの存在すら知らなかったのて゜すから。

_ 玉青 ― 2011年12月08日 21時46分12秒

ありがとうございます。
賢治自身がイメージしたのは、以前に書いたような、宝石を乗せて回るガラスの商品陳列台に違いなかろうと思うのですが、「天文古玩版・銀河鉄道の夜」では、オーラリーを推奨することにいたしましょう。たぶん、賢治も強硬に反対はするまい…と、勝手に思っています。

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