豊郷小学校に見る、昭和の理科教育空間(10)2012年06月06日 20時57分05秒

今日は金星の太陽面通過。

見た目の面白さもさることながら、太陽までの距離を決定するため、過去、多くの天文家が必死になって観測を続けてきたという、その歴史に興味を惹かれる天体ショーでもありました。当方はと言えば、同僚に日食グラスを借りてみたものの、私の視力ではまったく金星を捉えられず、例によって心眼で味わうのみで終わりました。

そんな風で、とりあえず腰をさすりながら仕事には行っています。

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さて、記事を先に進めて、今日は豊郷小の理科施設・「気象編」です。

気象といえばもちろん百葉箱。
これは大抵の学校にある(あった)でしょう。百葉箱は、温度と湿度を計るためのもので、乾湿計、最高・最低温度計、自記温度計、自記湿度計が内部の標準装備です。

しかし、皆さんの学校では、百葉箱はいったいどんな扱いを受けていたでしょうか。なんとなく日蔭者扱いをされていなかったでしょうか。中には、まったく活用されることなく、朽ちかけていた学校もあるかもしれません。

しかし、少なくとも昭和30年代の豊郷小の百葉箱は、恵まれていました。
写真で見る「彼」は、白い柵で囲まれた素敵な「露場(ろじょう;気象観測用の機器を設置した外庭)」に、いかにも明るい表情で立っています。よく見ると、この露場には、他にも雨量計や地中温度計が設置されていたようです。


同小には、それ以外にも風力・風速を観測するための観測塔↓や、


自記雨量計↓が置かれていました。


自記雨量計というのは、降った雨水をてっぺんの受水器から内部のタンクにためて、その水量変化を浮子(うき)で感知し、それを円筒時計に巻き付けた記録紙に記録する装置です。

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さて、こうして集めた各種の気象データをどう活用するか。

 「その日の観測結果は、単に記録をとって保存するだけでなく掲示板に展示して学習の資料にする。
 掲示板には天気図、風向、風速、風力、気温、地温、湿度、気圧、雲量、前日の気温、雨量などのうち、その校種、児童、生徒の能力に応じて必要なものを選択して掲示するとよい。
 豊郷小学校の掲示板には、天気予報板、天気時計、リボン温度計、折線グラフ、扇形グラフがあり、その月の気象の変化、当日の気温、風向、風速、雲量が示される。掲示板を露場の近くに立て記録をしておくと、気象観測に対する関心も高まる。」
 (『手引』p.113)

(よく見たら、写真が天地逆になっていたので、逆転して転載しました。)

(この項つづく)