星曼荼羅 (その3)2012年07月29日 17時53分16秒

ここで星曼荼羅の構造を確認しておきます。

そもそも星曼荼羅の様式には、大別して2つの型があります。
1つは諸尊を<方形>に配置した「寛助(かんじょ)系星曼荼羅」で、我が家にあるのは、こちらになります。
もう1つは、諸尊を<円形>に配置した「慶円系星曼荼羅」で、抱影が注目した法隆寺のものはこちらに属します。

(方形と円形の星曼荼羅の遺品。左は延暦寺旧蔵で、現在は宮内庁所蔵、右は法隆寺蔵。 林温著『妙見菩薩と星曼荼羅』(日本の美術377)、至文堂、1997より)

「寛助系」の方曼荼羅は、香隆寺寛空が天暦年間(947-956)に創案し、その4代後の弟子にあたる、成就院寛助(1056-1125)が整備したもの。
他方、「慶円系」の円曼荼羅は、天台座主慶円(944-1019)が創始したものです。
一般には、方形のものが東密系(=真言宗;東は東寺のこと)で、円形のものが台密系(=天台宗)とされています。

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見た目の印象は違いますが、両者の基本構造は同一です。
まず最外周(我が家のものだと緑に塗られた部分)には二十八宿が描かれ、その内部(同じく朱色の部分)に十二宮、さらにその内側に北斗七星九曜、そして中心部に釈迦(一字金輪仏頂)がいるという構造です。
(ただし方形では、釈迦の足下に北斗を置き、他の九曜が釈迦を取り巻いているのに対し、円形では釈迦の頭上に北斗があって、足下に九曜が配置されているという違いがあります。)


改めて、わが家の星曼荼羅の上半分↑と下半分↓のアップです。

(北斗七星の脇に、ちんまり輔星のアルコルがいるのが見えますか?)

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星好きの人がいちばん興味を持たれるのは、黄道星座の図像表現でしょう。
手元のものを左上から反時計回りに見ていくと、以下の順になっています(カッコ内は現行の星座名と漢名)。

魚宮(うお、双魚)、羊宮(おひつじ、白羊)、牛宮(おうし、金牛)、夫婦宮(ふたご、双子)、蟹宮(かに、巨蟹)、獅子宮(しし、獅子)、女宮(おとめ、処女)、秤宮(てんびん、天秤)、蝎宮(さそり、天蝎)、弓宮(いて、人馬)、磨羯宮(やぎ、磨羯)、瓶宮(みずがめ、宝瓶)

だいたいは西洋星座の表現と一致しますが、双子座が夫婦に、山羊座が怪魚の姿になっており、また射手座が単なる弓矢で表現されている点が違います。
それ以外の星座も、個々の絵を見ていると、何だか不思議な気がしてきます。そもそも西洋を連想させるものが、お釈迦さまと同居しているのが、奇妙な感じです。

(緋鯉のような魚座)
(魔法の壷のような水瓶座)

しかし、そこで感じる奇妙な感覚こそ、古代の汎ユーラシア的な文化交流が中世に入って途絶し、我々の先祖が長期にわたって文化的孤立状態で生きてきたことの証しなのでしょう。

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宿曜経の話から始まったこの話題も、この辺でそろそろ一区切り付けねばなりません。
この件ではまだまだ紹介したいモノもありますが、それはまた折をみて取り上げることにします。

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