太陽がいっぱい2012年07月09日 22時30分50秒

先日登場した、リュコステネスの『驚異と予兆の年代記』。
あの断簡零葉を求めたのは、裏面の挿絵にもいたく惹かれたからです。

↑は西暦808年の条に出てくる絵。

説明文の方はやはりさっぱりですが、この挿絵は明らかに幻日(げんじつ)を描いたものでしょう。上の絵は太陽と「偽りの太陽」が並んだ様子を、そして下の絵は、太陽の周りに二重の暈(かさ)が生じ、内暈から幻日が尾を曳いているところを表しています。

実際の幻日がどんなものかは、検索すれば大量の画像が出てくるのでご覧いただきたいですが、この絵は(太陽の顔を除けば)かなり実景に近いです。

幻日は、大気中の氷晶によって太陽光が反射屈折して生じる現象なので、天文というよりは気象分野の話題になります。決して稀な現象ではないといいますが、それでも昔の人にとっては説明のつかぬ怪現象であり、だからこそ、それを大事に記録にとどめ、750年後のリュコステネスの時代にまで情報が伝わったのでしょう。

   ★

私もある冬の日に幻日を見たことがあります。
駅のホームから、薄ぐもりの空に太陽を欺く光のかたまりがはっきり見えました。でも、幻日に注意を向ける人は他には誰もいないようで、そのことがかえって不思議でした。現代の人は、そもそもあまり空を見上げないのかもしれません。