天体議会の世界…水蓮の目から零れた碧い石(2)2013年09月28日 15時03分36秒

「箸休め」が続きます。

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今回(2)と銘打ちましたが、「水蓮の目から零れた碧い石」の(1)は以下。
http://mononoke.asablo.jp/blog/2013/08/23/6955616
謎の少年によって水蓮のまぶたから取り出された碧い石は、いったん水蓮のものとなったのですが、それが失われた顛末が、第2章の末尾に書かれています。

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きっかけはひょんなことです。
銅貨と水蓮は、議会に遅刻した「罰ゲーム」として海洋気象台屋上の手すりの外側を一周することになったのですが、そのとき鷹彦が声をかけました。

「水蓮、」
 うしろから鷹彦が呼びとめた。
「コフドロップ持ってないか。きみ、いつも持ち歩いているだろう。」
「あるよ。」
「分けてくれよ。咽喉が痛くなった。」
「ヤケになるからだ。」
 水蓮は片膝をあげて鞄を支え、中を手探りしていたが、すぐに瑠璃青〔るりあお〕の円い罐〔かん〕を見つけだし、鷹彦のほうへ投げた。(p.70)


ノドを大切にしないといけないはずの音楽部の鷹彦が、やたらと煙草を吸っていたのは、彼が変声期を迎え、自慢の美声が出なくなったのを悲観したためです。
やがて罰ゲームを終えた二人に、鷹彦は再び屈託のない声をかけます。

「助かった。これ、よく効くな。咽喉が急に楽になったよ。なかなか溶けないから飲みこんぢゃったけどさ。碧玉〔アクアブルー〕のをもらったよ。ほかは全部蜜色だったけど、碧のは一粒しかなかったから悪かったかな。」
「碧玉〔アクアブルー〕。」
 水蓮は俄に顔いろを変え、手にしていた罐の蓋をあけた。銅貨も一緒になって覗きこんだ。罐の中には柘榴石とそっくりな形をした蜜色の粒が揃っている。半透明で、微かに檸檬〔シトロン〕の芳薫〔かおり〕がする。(p.73)


そう、ご想像の通り、水蓮はのど飴と一緒に碧い結晶を缶に入れておいたのです。

「ぢゃあ、鷹彦がのみこんだっていうのは、あの結晶。」
「しッ。」
 しまいまで云わないうちに水蓮の手がのび、銅貨の口を塞いだ。
「この際、黙っておこう。石をのみこんだと知ったら鷹彦の奴、大騒ぎしかねないからな。」
 水蓮は微笑みながら囁いた。(p.74)

(この項続く)