人はいつだって星を見る ― 2018年05月18日 06時31分44秒
■やあ、老眼だって?
●うん、最近本当に画面が見づらくって。早く老眼鏡を買わなきゃ。
■なるほど。まあ、老眼鏡やハズキルーペも結構だけどさ、それより画面の拡大率を変えたほうが早いんじゃないの?
●あ、そうか。そんな当たり前のことも気づかなかった。やっぱり年かなあ…。
――というわけで、記事の方は無事再開です。
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最近の買い物から。
ザラ紙に刷られ、茶色く変色した、みすぼらしい星図帳(全3分冊)。
その背後にあった人々の営みを想像すると、いろいろな思いが胸をよぎります。
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世界は常に動いています。今も昔も。
200年ちょっと前、激動の中心はフランスでした。
言うまでもなく、フランス革命とナポレオンの登場です。
あれは、その後の世界の枠組みを決定づけた、大きな出来事でした。
100年前の激動の中心はロシアです。
帝政に反旗を翻した労働者たちの咆哮もまた、世界史の流れを変えるものでした。
戦艦ポチョムキンの反乱で知られる、1905年の「第一革命」、帝政が倒れた1917年2月の「二月革命」、そして革命後の臨時政府が、さらにボリシェヴィキ(急進左派)によって打ち倒された、同年10月の「十月革命」。
まさに激動です。そして多くの血が流れました。
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その激動の最中、1916年に当時の首都・ペトログラードで刊行されたのが、上の星図帳です。
(第1分冊タイトルページ・部分)
その体裁からすると、これは星図帳というよりも、毎月の空の見どころを紹介する「観望ガイド」といった方が適切かもしれません。
(6月1日 午後10時の空)
いずれにしても、これが美しいとも、その内容が格別優れているとも思われないですが、ただ興味深く思うのは、激動のロシア革命の最中に、首都でこういう本が出版されていた…という事実です。
(簡単な工作で、手製の星座早見ができるよう工夫されています)
100年前のロシアにも、星を愛する人は多かったことでしょう。
騒乱と無縁の人はもちろん、騒乱の渦中にいた人だって、白軍の陣地でも、赤軍の陣地でも、日が暮れれば、それぞれ空を見上げて、物思いにふける人はいたはずです。
人はいつだって星を見るのです。
それが地上の争闘に何らかの影響を及ぼしたのかどうか、ぜひ平和に寄与する方向で影響してくれたらと思いますが、これはもう少し熟考する必要がありそうです。
一つ言えるのは、争闘の最中でも星を見上げる生物はヒトだけであり、そこにこそヒトの人らしさはある…ということです。
コメント
_ S.U ― 2018年05月18日 18時57分42秒
_ 玉青 ― 2018年05月19日 16時54分29秒
>宇宙を見て人間の生活を振り返ろう
ぜひ振り返ってほしいですね。でも振り返って欲しい人ほど、振り返らない傾向があるのが口惜しいです。
ぜひ振り返ってほしいですね。でも振り返って欲しい人ほど、振り返らない傾向があるのが口惜しいです。
_ S.U ― 2018年05月19日 21時34分38秒
>振り返らない傾向がある
はい。いやしくも人を指導しようとする者なら誰もカントのごとく「天上の星の輝きと、わが心の内なる道徳律」と自信を持って述べられるよう自省をしてもらいたいものです。
はい。いやしくも人を指導しようとする者なら誰もカントのごとく「天上の星の輝きと、わが心の内なる道徳律」と自信を持って述べられるよう自省をしてもらいたいものです。
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革命勢力は、宇宙を見て視野を広げ目覚めよ、蒙を啓けと訴えたかもしれません。守旧派は、天には星辰の秩序、人には社会の秩序と説いたかもしれません。そんなことは知ったことかと単に星を見て頭を休めるという人もあったでしょう。
宇宙を見て人間の生活を振り返ろう、という意味と取るなら、どれもよろしいようにと思います。