ファーブルの本(6)…『ファーブル植物記』のことなど ― 2007年03月08日 06時14分11秒

(ご褒美の証し。昨日の本の見返しに貼られた証書。)
昨日の記事の末尾は、自分に引き付けて考えすぎました。やはり、大切なご褒美だから、大事にとっておいたのだ、というのがいちばん自然な解釈のようです。
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さて、昨日、『ファーブル植物記』 を改めて見ていたら、訳者である日高敏隆氏の 「解説めいたあとがき」 という文章が目にとまりました。
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ファーブルといえば 『昆虫記』 である。
けれどファーブルは、そのほかにもいろいろな本を書いている。そのいずれも、全10巻という 『昆虫記』 のような大冊ではなく、一冊本の、そして形式も 『昆虫記』 とはまったくちがう、科学の入門書である。
〔…〕 ふしぎなことに、それらのなかには植物の本がない。ファーブルは昆虫や地質のことばかりでなく、植物のこともたいへんよく知っていたが、植物についてのファーブルの著作は、今、こうして日本語に訳されたこの本だけである。この本の抄訳と思われるものが、昭和5年に 「ファブル科学知識全集」 第9巻 『植物の世界』 (アルス刊)として出版されているが、内容の違うところもあり、原題が記載されていないので、確かなことはわからない。
この本は原題を 『薪〔たきぎ〕の話(Histoire de la Bûche)』 という。やはりファーブルという人物に魅せられて、ファーブルゆかりの地を訪ね歩いた画家の安野光雅氏が、フランスのカレーの図書館でみつけ、大いに興味をそそられてコピーされてきた。〔以下略〕
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と、邦訳出版の事情が書かれています。
もちろん、ファーブルが植物について書いた著作はこれだけ…というのは誤解で、日高氏自身、新しく出た 『植物のはなし』 の 「訳者あとがき」 では、その点を訂正されています。ただ、四半世紀前には、ファーブルの書誌を調べるのもなかなか骨で、文献を「招来」するのも一苦労だったことが改めて分かります。
今では自宅のパソコンの前に座ったまま、パッパッと情報が出てきますし、情報だけでなく「物」の方も、たぶん安野氏が払ったであろうコピー代より安い値段で、原書を発注することも可能になりました。
(というのは即ち発注したということで、いささか酔狂とは思いましたが、でも、1867年、昆虫記が出る20年以上も前に出版されたこの本は、アヴィニョンでばりばりの現役教師だった頃のファーブルをしのぶには、恰好の本だと思ったのです。)
つくづく時代の推移を感じます。昔は良かった。でも今もいいぞ…と思います。
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