『天体議会』のモデルの地をたどる…六甲(2)2010年02月06日 18時33分56秒

六甲学院に向う途中で立ち寄った神戸大学・六甲台キャンパス。
下の写真は、神戸大学工学部の景観です。

(背後は六甲山地)

ここは『天体議会』の中でも最も理科濃度の高い場所、「鉱石倶楽部」とちょっと関係があります。

「鉱石倶楽部は、実際誰が主人なのかよくわからなかったが、店で番をしているのはいつも同じ、工科大学〔リクス〕の学生だった。彼はもの静かで信頼のおける人物だ。少年たちが勝手に戸棚を開けて鉱石や美晶を手にとって眺めても文句を云うことはないし、鍵の掛かった戸棚もすぐに開けてくれる。

〔…〕少年たちが真鍮の把手を持って首を傾げているところへ、通りのほうから、いつもの黒ずくめの服を着た店番〔コンシェルジェ〕の大学生が歩いてきた。彼は鍵を出して扉を開けながら、ふたりの話を聞いた。」

…という、頼もしい存在がいそうな場所。

もっとも字面だけから言うと、神戸には「神戸芸術工科大学 Kobe Design University」もありますが、英語名から分かるように、ここは純然たる芸術系の大学なので、モデルとしてはやはり神大工学部の方がふさわしいように思います。

事前のリサーチ不足で、↓の味わい深い建物は見逃しました。このレトロな建物は、『天体議会』的にも、タルホ的にも是非見るべきでした。返す返すも残念。
ところで、年明けに野尻抱影と山口誓子の句文集『星恋』を話題にしましたが、キャンパス内には「山口誓子記念館」があります(公式サイト)。


西宮にあった誓子邸の母屋を復元したものだそうです(オリジナルは震災で倒壊)。誓子は昭和28年から西宮に居を定め、翌年に出た中央公論社版の『星恋』序文は同地で書いています。それを思うと、なんとなく懐かしいような、この丘が星に近い場所のような気がします。

神戸大学からの眺めも素晴らしく、遠くには光る海が見えました。きっと夜景も美しいでしょう。(star gazerにとっては甚だ迷惑でしょうが…)


  ★

こうして六甲を後にして、次は神戸旧市街へと向います。
(わずか1泊2日の旅の記録が延々と続き、自分でも何か妙だぞと思いますが、それだけ密度の高い旅だったのでしょう。)

コメント

_ かすてん ― 2010年02月06日 19時58分40秒

山口誓子の記念館が神戸大にあるのですか。戦中より住んでいた三重県でしたが、昭和28年の台風13号で被災し西宮苦楽園へ移ったのでしたね。『星戀』の感動的な「序に代えて 二つの星夜」はまさに台風13号被災のエピソードから始まります。

_ 玉青 ― 2010年02月08日 06時36分26秒

そうなんですよ。嬉しい偶然の巡り合いでした。
誓子も、その住まいも、天災にたたられた感はありますが、今は安住の地を得て、穏やかなたたずまいでした。

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