リプロ考2012年01月27日 22時39分27秒


机の脇に置かれている、リプロの天球儀。
球径18cmと、あまり場所をとらないのが利点。この品は、以前登場したミニ天球儀(http://mononoke.asablo.jp/blog/2006/10/12/558353)の上位バージョンで、図柄は同じ16世紀のメルカトル天球儀が元になっています。


こうして見ると、何となくもっともらしくも見えますが、近くで見るとけっこうずさんです。


球に貼り付けた星図(ゴア)の継ぎ目がずれて、アンドロメダ姫は袈裟斬りだし、王妃カシオペアは、哀れにも顔が途中で切れてしまっています。また、球の重心が偏っているせいで、好きな星座を見ようと思っても、球から手を離すと、くるっと回って、必ずしし座が上に来てしまいます。


細部はなかなか凝っているんですが、肝心の天球儀としての機能はいまひとつ。雰囲気作りの小道具というのがせいぜいです。まあ、これは同じリプロでも、ごく粗略な部類で、世の中にはもっとよく出来たリプロもたくさんあることでしょう。

   ★

ところで、リプロの価値や効用とは何でしょう。

もちろん、リプロは貧者の味方で、懐に優しいという大きな利点があります。
本物志向とは相容れませんが、しかしそれも物によりけりで、本物が途方もない値段だったら、リーズナブルな価格で、それらしい雰囲気を味わえるリプロは、やはり心強い存在です。ただ、これはいわば後ろ向きの利点ですね。つまり、「本当は本物が欲しいけれど、しょうがないからリプロ」という。

しかし、リプロにはもっと積極的な価値もあります。
たとえば、相手がリプロなら、肩の力を抜いて、気楽に付き合うことができます。本物のアンティークだと、紫外線とか、湿気とか、いろいろ神経を使わないといけませんが、安価なリプロなら全然平気です。アンティークの天球儀を、小さな子どもと一緒にクルクル回すのは勇気が要りますが、リプロなら回し放題で、きっと親子のふれあいにもなるでしょう。(リプロでも高級な品になると、いくぶん微妙ですが。)

さらに、リプロの「見かけは古いがモノは新品」という点を、好ましく思う人もいるはずです。というのも、古いものには、やはり正体の知れない染みや、虫食いや、亡者の念などが付きまとうので、それを不安に思う人には、リプロがお勧めです。

とはいえ―。
こう書いていても、やっぱり心のどこかに「無理してる感」があるのは事実で、何とかならんかなあ…と思うのですが、私にとっては、最初に書いた「後ろ向きの利点」が依然最大のメリットだと認めざるを得ません。

コメント

_ たつき ― 2012年01月28日 17時51分57秒

玉青さま
としますと、複製品を買うことにあまり同意したくないわけですね。私もできれば本物が欲しいです。いま挿絵本(荒俣宏の好きな)も集めているのですが、いくら複製品がきれいで安くても、私は汚い本物を買います。人形も同様です。しかし、発掘品となると、それを自分のものにするのと犯罪になりかねません。あるいは、偽物を売りつけられるか。
これは骨董品全般に言えることでしょう。
本物が手に入りやすいものと、手に入りにくいもの。
後者の方は、値段と品物と自分がどれほどそれを欲しいかということをよく考えて、買うようにしています。

_ 玉青 ― 2012年01月28日 21時15分56秒

本物か、複製か。私も基本的に本物派なのですが、現実を考えると、そうとばかり言ってられない場面も多々あって、実に悩ましいです。どう行動するのがベストか、たぶん唯一絶対の答はないでしょうが、とにかくその場その場で熟慮断行するしかなさそうですね。

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