程よくヴンダー、程よく理科室 ― 2012年01月31日 20時29分50秒
理科室風書斎に何を求めるか。
比較的最近話題にした、トリノにある「ノーチラス」や、Vicious Sabrina的な、ダークなヴンダー路線ももちろん嫌いではありません。いや、はっきり好きと言ってもいいです。
しかし、もっと好きなのは理科室の風趣であり、学問としての博物学の味わいである…ということは、これまで何度も書いてきました。
あからさまなヴンダー路線は、何といっても面白く、感覚的な悦びを生みます。
しかし、ちょっと気を緩めると、単にゲテもの的な猟奇趣味に堕してしまう恐れもあり、理科室風書斎の実現に当たっては、その辺の「奇/驚」と「理/知」のバランスが肝要だと感じます。
そうしたことを考えていた折、これはちょっといいなと思える画像を、これまたblack‐poolさん経由で目にしました。オリジナル画像は、ニューヨーク在住の写真家、リチャード・バーンズ氏のサイトに掲載されたものです。
被写体はローマにあるTasso 高校内部。おそらく生物学教室に付属する標本室でしょう。
ワニの剥製や、鹿の頭骨が登場している時点で、濃厚なヴンダーカンマーの空気が漂いますが、周囲に並ぶ器具や薬品、それに正面にちらっと覗く教室風景に目をやれば、ここはやっぱり理科室の一部たることが明瞭で、その辺のバランスのとり方が絶妙です。言うなれば、ここは「理科室風ヴンダーカンマー」であり、「ヴンダーカンマー風理科室」というわけです。
もちろん、ここには「書斎」の要素がないので、ただちにこれが理科室風書斎のモデルとはなりえないのですが、こういう風情や空気感は大いに賞すべきものがあると思いました。
コメント
_ S.U ― 2012年02月01日 07時56分04秒
_ 玉青 ― 2012年02月01日 20時44分07秒
あれは現実なのか、夢の中で見た光景なのか…
そのあわいに広がる幻影の理科室の記憶。
遠くて近い、その紗のかかったような世界にふと迷い込むのも、理科室趣味の愉しみのひとつとして、大いに味わい深いものでしょう。
そのあわいに広がる幻影の理科室の記憶。
遠くて近い、その紗のかかったような世界にふと迷い込むのも、理科室趣味の愉しみのひとつとして、大いに味わい深いものでしょう。
_ S.U ― 2012年02月03日 07時30分43秒
>現実なのか、夢の中で見た光景なのか
またも無粋なことですみませんが、現実の体験とウソの体験を心理テストかなにかで判定する方法は開発されていないのでしょうか。
幸いに、昔の思い出で判定しないと支障のあるようなものはないのですが、昨今は、その仕事は過去にしたかどうだとか、言った言わない、とかが問題になることはあります。
またも無粋なことですみませんが、現実の体験とウソの体験を心理テストかなにかで判定する方法は開発されていないのでしょうか。
幸いに、昔の思い出で判定しないと支障のあるようなものはないのですが、昨今は、その仕事は過去にしたかどうだとか、言った言わない、とかが問題になることはあります。
_ 玉青 ― 2012年02月03日 21時18分08秒
結論から言うと、記憶に色は付いていないので、「本当の体験(記憶)」を「偽の体験(記憶)」から区別する方法はないと思います。できることは客観的記録や他の人の記憶と照合して、その妥当性を推測することだけでしょう。
このトピックは、たぶん法廷心理学においていちばん議論されているはずです。
つまり、証言の信憑性(Aさんはそれを本当に見たのか、それとも見たと思っているだけなのか)に関わる研究テーマで、この分野ではロフタスという心理学者がいちばんの大物です(詳細はウィキの「虚偽記憶」という項目をご覧下さい)。
ロフタスは、記憶の可変性(たよりなさ)を強調する立場で、これはある意味、人を「悪意のない嘘つき」呼ばわりする説なので、一部からは批判も強いようです。
いかんせん学界における最近の議論の趨勢をよく知らないのですが、その主張には確かな真理が含まれていると私には思われます。
このトピックは、たぶん法廷心理学においていちばん議論されているはずです。
つまり、証言の信憑性(Aさんはそれを本当に見たのか、それとも見たと思っているだけなのか)に関わる研究テーマで、この分野ではロフタスという心理学者がいちばんの大物です(詳細はウィキの「虚偽記憶」という項目をご覧下さい)。
ロフタスは、記憶の可変性(たよりなさ)を強調する立場で、これはある意味、人を「悪意のない嘘つき」呼ばわりする説なので、一部からは批判も強いようです。
いかんせん学界における最近の議論の趨勢をよく知らないのですが、その主張には確かな真理が含まれていると私には思われます。
_ S.U ― 2012年02月04日 09時13分18秒
>記憶に色は付いていない
お教えありがとうございます。
そうですか。私の記憶に色は付いていないですか。私の使えるお金にはすべて色が付いていますけど(笑)。
「虚偽記憶」ですか。そういうこともありそうですね。ただ法廷では、人は誰も自分がかわいいですから、無理にでも「自分は知らなかった、悪気はなかった」と自分に言い聞かせるでしょうから、ちゃんとした深層心理の研究になるかどうか、素人ながら疑問に思います。私の記憶やボケのような誰の損にも得にもならない材料で研究してほしいです。
学校の旧館はもう取り壊されていますので、今から訪れることもできません。「百年史」などの資料にも棚の配置まで載っていませんし、同級生に聞くくらいしかないですね。
お教えありがとうございます。
そうですか。私の記憶に色は付いていないですか。私の使えるお金にはすべて色が付いていますけど(笑)。
「虚偽記憶」ですか。そういうこともありそうですね。ただ法廷では、人は誰も自分がかわいいですから、無理にでも「自分は知らなかった、悪気はなかった」と自分に言い聞かせるでしょうから、ちゃんとした深層心理の研究になるかどうか、素人ながら疑問に思います。私の記憶やボケのような誰の損にも得にもならない材料で研究してほしいです。
学校の旧館はもう取り壊されていますので、今から訪れることもできません。「百年史」などの資料にも棚の配置まで載っていませんし、同級生に聞くくらいしかないですね。
_ 玉青 ― 2012年02月04日 20時11分03秒
>学校の旧館はもう取り壊されています
ドラマとかだと、
「あいつは死んでなんかいない。みんなの心の中に生き続けているんだ!」
というようなセリフが出てきますね。
その伝でいけば、
「あの収納スペースは、S.Uさんの心の中にしっかりと存在し続けている」
と言い切ってしまうというのはどうでしょう。
本当にあったのか、夢の中の光景だったのかは、まさに虚実皮膜の間にありと達観することにして…
ドラマとかだと、
「あいつは死んでなんかいない。みんなの心の中に生き続けているんだ!」
というようなセリフが出てきますね。
その伝でいけば、
「あの収納スペースは、S.Uさんの心の中にしっかりと存在し続けている」
と言い切ってしまうというのはどうでしょう。
本当にあったのか、夢の中の光景だったのかは、まさに虚実皮膜の間にありと達観することにして…
_ たつき ― 2012年02月08日 05時16分01秒
玉青様
確かめるようですが、驚異の部屋にはかなり文系のものも含まれますが、玉青さんの部屋には外れるのですよね。例えば、人形、家具、文房具、珍しい生活用具、宗教系の(異教的・魔的な)もの、などです。
参考は荒俣宏や渋澤龍彦です。
それと以前から気になっていたのですが、Wnderkammerのkammerはドイツ語で部屋という意味ですが、もう一つZimmerという単語もまた部屋という意味ですよね。この二つの違いはどこにあるのでしょう。辞書で調べると、Kammerの方は狭い物置部屋のことを指すことが多いそうです。
確かに(高級な)物置部屋ではありますが、Wnderの品を置くには狭い部屋では無理ですよね。Wnderzimmerではいけないのでしょうか。
そこのところがどうしてもわかりません。
玉青さんはなにか語源とかご存知ですか。情報があったら、教えていただけたらと思っています。
確かめるようですが、驚異の部屋にはかなり文系のものも含まれますが、玉青さんの部屋には外れるのですよね。例えば、人形、家具、文房具、珍しい生活用具、宗教系の(異教的・魔的な)もの、などです。
参考は荒俣宏や渋澤龍彦です。
それと以前から気になっていたのですが、Wnderkammerのkammerはドイツ語で部屋という意味ですが、もう一つZimmerという単語もまた部屋という意味ですよね。この二つの違いはどこにあるのでしょう。辞書で調べると、Kammerの方は狭い物置部屋のことを指すことが多いそうです。
確かに(高級な)物置部屋ではありますが、Wnderの品を置くには狭い部屋では無理ですよね。Wnderzimmerではいけないのでしょうか。
そこのところがどうしてもわかりません。
玉青さんはなにか語源とかご存知ですか。情報があったら、教えていただけたらと思っています。
_ 玉青 ― 2012年02月08日 20時46分42秒
珍奇なモノは全般に好きなので、文系チックなものもなくはないのですが、今の部屋はとにかく狭いので、意識してセーブしています。
ドイツ語のことは全然分からないので、いい加減なお答えしかできませんが、Kammerには「物置き」というちょっと侘しい語義のほか、「(美術品の)収蔵室」や「宝庫」という意味もあるので、WunderkammerのKammerは、おそらくその辺に由来するのではないでしょうか。KammerとZimmerの違いは、たぶん人が常時そこで生活するか(Zimmer)、しないか(Kammer)の違いかな?と想像します。
ドイツ語のことは全然分からないので、いい加減なお答えしかできませんが、Kammerには「物置き」というちょっと侘しい語義のほか、「(美術品の)収蔵室」や「宝庫」という意味もあるので、WunderkammerのKammerは、おそらくその辺に由来するのではないでしょうか。KammerとZimmerの違いは、たぶん人が常時そこで生活するか(Zimmer)、しないか(Kammer)の違いかな?と想像します。
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
私の学校時代からの趣味で言うと、ディスプレイ性は薄いがちゃんと分類整理されていて、図書館の本棚のように背の高い棚が接近していくつも並んでいるような理科実験室の収納スペースか博物館の収蔵庫のようなところが好きです。
私の通っていた中学校か高校の旧館にそのようなスペースがあったと思うのですが、ホグワーツ魔法学校の奥の部屋のような印象が残っていて、今では現実のことだったのか当時夜の夢に見たことなのかわからなくなってしまいました。