ジョバンニが見た世界…大きな星座の図(3) ― 2013年02月10日 10時47分05秒
天気晴朗なれども、昨日も今日も冷えこみます。
記事の書き方を忘れないように、ぼちぼち話を進めます。
記事の書き方を忘れないように、ぼちぼち話を進めます。
★
時計屋の店先に飾られていた星座の図。
<サイズ>については、前回の記事で書いたように、円形星図ならば直径4~50cmクラスの大きさだと想像します。まあ、絶対的に「大きい」とも言い難いですが、脇に置かれた星座早見盤よりはずっと大きいですし、店先の飾り付けとしては、それぐらいの方が扱いやすいかもしれません。
次に、その<内容>を考えてみます。
もう一度原文に帰ると、
「〔…〕空じゅうの星座を ふしぎな獣や蛇や魚や瓶の形に書いた大きな図〔…〕ほんとうに こんなような蝎だの 勇士だの そらにぎっしり居るだろうか、ああぼくはその中をどこまでも歩いて見たい」
とあります。
ここに登場する星座の候補を、順不同で挙げてみます(黒は黄道星座、青は黄道よりも北、赤は南の星座)。
▼獣 (しし、おうし、おひつじ、やぎ、やまねこ、こじし、おおぐま、こぐま、りょうけん、きりん、ペガスス、こうま、こぎつね、おおかみ、おおいぬ、こいぬ、うさぎ、いっかくじゅう)
▼蛇 (へび、うみへび、みずへび)
▼魚 (うお、みなみのうお、とびうお、かじき)
▼瓶 (みずがめ)
▼蝎 (さそり)
▼勇士 (ヘルクレス、ペルセウス、オリオン)
候補が1つしかない「瓶」と「蠍」は即座に決定です。したがって、この星図に黄道12星座が描き込まれていることは確実。…となると、「魚」も「うお座」が有力ですし、「獣」はたくさんいるので1つに決まらないにしろ、獅子や牡牛の姿がそこに含まれることも、確からしく思えます。
「勇士」候補のうち、オリオンは勇士よりは「狩人」のイメージなので、ここではペルセウスないしヘルクレスが穏当かも。(ちなみに、賢治が愛読したとされる、吉田源治郎著『肉眼に見える星の研究』には、「オリオンは…世界に比無き偉い猟師」、「ペルセウスと云ふ勇士」、「ヘルクレスは…古代の半神のうちでも尤も名のある勇士」と叙述されています。)
とすると、この星図は黄道から北を表現した北天星図ということになりますが、即断は禁物。物語中に登場するのは以下の星座ですから、銀河鉄道の旅は、むしろ南に偏っています(その範囲は、だいたい赤緯+40度から-65度にわたります)。
はくちょう、わし、いるか、くじゃく、インディアン、つる、さそり、ケンタウルス、みなみじゅうじ
ジョバンニは、華麗な星座絵に惹きつけられ、夢の中でこれらの星座を縫って旅しました。とすれば、ジョバンニが見た星座絵には、北天のみならず南天の星座も含まれていなければならないはずで、結論をいえば、そこには南北両天の星座 ―文字通り「空じゅうの星座」― が描かれていたと思います。
(長いので、ここで記事を割ります。)
コメント
_ S.U ― 2013年02月10日 15時28分01秒
_ 玉青 ― 2013年02月10日 19時26分28秒
_ S.U ― 2013年02月11日 08時10分32秒
お調べありがとうございます。お示しのバッカー天球図は(たぶん)初めて見ました。これは色つきできれいなものですね。
でも、これとは違う、「もっとスゴイもの」です。バッカー星図の直交座標は赤道が水平軸になっていますが、私の見たのは水平軸が黄道になっていました。ヘタな絵のさらし物になりますが、上のURLのような感じのものです。実際は銅版画か何かで白黒2値のトーンのものでした。
昔の出版の現物を見たわけではありませんが、たぶん全天を含む1枚もの星図ではなく、北天だけとか、その一部だけとか、縮尺の違う図の複数枚が1つの冊子になっている「アトラス」形式ではないかと思います。私の見たのは現代の復刻版かそれが引用された解説本で、和書だったか洋書だったかは忘れました。たぶん、丸善とか紀伊国屋とかで立ち読みしたのでしょう。それ以後、二度と見つけたことはありません。
またお心当たりがありましたらお知らせ下さい。
でも、これとは違う、「もっとスゴイもの」です。バッカー星図の直交座標は赤道が水平軸になっていますが、私の見たのは水平軸が黄道になっていました。ヘタな絵のさらし物になりますが、上のURLのような感じのものです。実際は銅版画か何かで白黒2値のトーンのものでした。
昔の出版の現物を見たわけではありませんが、たぶん全天を含む1枚もの星図ではなく、北天だけとか、その一部だけとか、縮尺の違う図の複数枚が1つの冊子になっている「アトラス」形式ではないかと思います。私の見たのは現代の復刻版かそれが引用された解説本で、和書だったか洋書だったかは忘れました。たぶん、丸善とか紀伊国屋とかで立ち読みしたのでしょう。それ以後、二度と見つけたことはありません。
またお心当たりがありましたらお知らせ下さい。
_ 玉青 ― 2013年02月11日 10時39分21秒
S.Uさんの絵心にも感銘をうけましたが(笑)、なるほど、これはスゴイですね。…と言いつつ、なんだかこの絵には既視感があります。何となくどこかで見た気がします。今度見たら絶対に忘れないと思いますので、ひとまず宿題とさせてください。
_ S.U ― 2013年02月11日 16時10分27秒
ははーっ、よろしくお願いいたします。
ネットを探してもなかなか見つからないので、比較的近い時代に古いスタイルをまねて作った(たとえば、19世紀に17世紀のスタイルをまねた)「新古典主義」の星図なのかもしれません。時代についてはさっぱりわかりません。絵心はさっぱり無しですが、挿絵の必要があれば描かざるをえないこともたまにあり、今回はどうも失礼をいたしました。
それから、協会業務連絡のほうのご対応もありがとうございます。よろしくお願いいたします。
ネットを探してもなかなか見つからないので、比較的近い時代に古いスタイルをまねて作った(たとえば、19世紀に17世紀のスタイルをまねた)「新古典主義」の星図なのかもしれません。時代についてはさっぱりわかりません。絵心はさっぱり無しですが、挿絵の必要があれば描かざるをえないこともたまにあり、今回はどうも失礼をいたしました。
それから、協会業務連絡のほうのご対応もありがとうございます。よろしくお願いいたします。
_ 玉青 ― 2013年02月11日 17時56分30秒
いえいえ、こちらこそ新しい話題を振っていただきありがとうございます。
ときに今回のやりとりから、ジョバンニが見た星図を円形星図と限定せず、方形星図でもいけるんじゃないかと思えてきました。当初の想定から離れますが、ひょっとしたら、そっちの方向に結論を持っていくかもしれません。(長期連載のわりに出たとこ勝負ですね・笑)
ときに今回のやりとりから、ジョバンニが見た星図を円形星図と限定せず、方形星図でもいけるんじゃないかと思えてきました。当初の想定から離れますが、ひょっとしたら、そっちの方向に結論を持っていくかもしれません。(長期連載のわりに出たとこ勝負ですね・笑)
_ 霜ヒゲ ― 2013年02月16日 02時20分28秒
>長方形の黄道中心星図でりゅう座が上部にベタ~とのたっている星図
新天文学講座1「星座」巻頭図版Ⅴにある<モンタナリの彗星図>のようにも思われますが、いかがでしょうか。(抱影の解説は同書P103)
玉青様の石田五郎氏の記事を拝見して、関連書籍を眺めていたら、たまたま気づきました。
石田五郎→リブロポート「野尻抱影」→広瀬秀雄氏のルビエントスキー
「彗星全集」のエピソード→新天文学講座「星座」の古星図
似たような特徴の古星図は他にもあるかもしれないので間違っていたらご容赦下さい。
新天文学講座1「星座」巻頭図版Ⅴにある<モンタナリの彗星図>のようにも思われますが、いかがでしょうか。(抱影の解説は同書P103)
玉青様の石田五郎氏の記事を拝見して、関連書籍を眺めていたら、たまたま気づきました。
石田五郎→リブロポート「野尻抱影」→広瀬秀雄氏のルビエントスキー
「彗星全集」のエピソード→新天文学講座「星座」の古星図
似たような特徴の古星図は他にもあるかもしれないので間違っていたらご容赦下さい。
_ S.U ― 2013年02月16日 06時30分25秒
霜ヒゲ様、情報ありがとうございます。
新天文学講座は、職場の図書室にあったように思いますので、来週早々に確認してまいります。スターアトラスで見つからないので、彗星図だったかなと思い始めたところでした。パングレとルビエントスキーは考えましたが、モンタナリは思い当たりませんでした。
新天文学講座は、職場の図書室にあったように思いますので、来週早々に確認してまいります。スターアトラスで見つからないので、彗星図だったかなと思い始めたところでした。パングレとルビエントスキーは考えましたが、モンタナリは思い当たりませんでした。
_ 玉青 ― 2013年02月16日 08時06分54秒
霜ヒゲさん、すごい!
新天文学講座、見ました、ありました!
おそらく私のかすかな記憶もここに由来するんじゃないでしょうか。
S.Uさんに早々とご確認いただくために、口絵をスキャンしました。
いかがでしょうか。
http://www.ne.jp/asahi/mononoke/ttnd/temp_image/montanari
抱影翁も解説の中で、「長方形の中に北天・南天を描いた結果、りゅう座が長ながと一直線に横たわっているのも奇観である」と、S.Uさんと同じところに着目しています。
新天文学講座、見ました、ありました!
おそらく私のかすかな記憶もここに由来するんじゃないでしょうか。
S.Uさんに早々とご確認いただくために、口絵をスキャンしました。
いかがでしょうか。
http://www.ne.jp/asahi/mononoke/ttnd/temp_image/montanari
抱影翁も解説の中で、「長方形の中に北天・南天を描いた結果、りゅう座が長ながと一直線に横たわっているのも奇観である」と、S.Uさんと同じところに着目しています。
_ S.U ― 2013年02月16日 09時13分41秒
おー、これこれ。
本当に、霜ヒゲさん、すごい! 玉青さんの蔵書もすごい!
お陰様で、この竜を30年ぶりくらいに拝むことができました。
私の記憶では、この意匠のりゅう座の出ている星図は同じ本に2コマあった気がしまして、全体図の他のページに竜の頭だけ(胴体だけだったかもしれませんが)入っているクローズアップのコマもあったように思います。モンタナリの別の彗星の記述だったのかもしれません。
また、新天文学講座を見て確認しておきます。
本当に、霜ヒゲさん、すごい! 玉青さんの蔵書もすごい!
お陰様で、この竜を30年ぶりくらいに拝むことができました。
私の記憶では、この意匠のりゅう座の出ている星図は同じ本に2コマあった気がしまして、全体図の他のページに竜の頭だけ(胴体だけだったかもしれませんが)入っているクローズアップのコマもあったように思います。モンタナリの別の彗星の記述だったのかもしれません。
また、新天文学講座を見て確認しておきます。
_ 霜ヒゲ ― 2013年02月16日 20時26分13秒
お役に立てた上、過分なお褒めの言葉を頂き恐縮です。但し私の場合、蔵書が貧弱なため見つけやすいので却ってそれが幸いしたというか何というか....(汗)
元になった星図は同じものかもしれませんが、S.Uさんは別な書物でそれをご覧になったのかもしれませんね。
新天文学講座の図版はあまり大きくはないので、りゅう座の頭部や鳳凰座など、もっと大きくもっと明瞭に見たい気がします。
元になった星図は同じものかもしれませんが、S.Uさんは別な書物でそれをご覧になったのかもしれませんね。
新天文学講座の図版はあまり大きくはないので、りゅう座の頭部や鳳凰座など、もっと大きくもっと明瞭に見たい気がします。
_ 玉青 ― 2013年02月17日 19時34分47秒
「謎」が早々と解けて良かったです。
S.Uさんのみならず、私もスッキリです。
霜ヒゲさんに、改めてお礼申し上げます。
S.Uさんのみならず、私もスッキリです。
霜ヒゲさんに、改めてお礼申し上げます。
_ S.U ― 2013年02月18日 20時12分37秒
今日、図書室に行って、新天文学講座「星座」を見てまいりました。やはりこの星図です。しかし、私が見たのは、こういう写真の縮小版ではなく、銅版?の網線が見えるような白黒印刷だったように思います。ですから、原板は同じでも見たのは別の本だと思います。何はともあれ出典がわかったので大満足です。ありがとうございました。
で、103ページの野尻抱影の解説を読むと、この写真はルビニエツキのTheatrum Cometicumから取ったとありました。ではそっちを、とグーグルブックで検索すると、
http://books.google.co.jp/books?id=SiMqbFuuoFgC&dq=theatrum+cometicum&hl=ja&source=gbs_navlinks_s
が見つかりました。ここで本の画像をクリックすると、内容の初めのほうで、同じ星図のより鮮明な画像が見られます。webで拡大すれば竜のウロコが見える程度です。霜ヒゲさんご着目の鳳凰座は背後に後光ではなく煙が立っているようです。
モンタナリの原著は検索してもどれかわからないので、この手の星図の別のコマがあるのかどうかはわかりません。
で、103ページの野尻抱影の解説を読むと、この写真はルビニエツキのTheatrum Cometicumから取ったとありました。ではそっちを、とグーグルブックで検索すると、
http://books.google.co.jp/books?id=SiMqbFuuoFgC&dq=theatrum+cometicum&hl=ja&source=gbs_navlinks_s
が見つかりました。ここで本の画像をクリックすると、内容の初めのほうで、同じ星図のより鮮明な画像が見られます。webで拡大すれば竜のウロコが見える程度です。霜ヒゲさんご着目の鳳凰座は背後に後光ではなく煙が立っているようです。
モンタナリの原著は検索してもどれかわからないので、この手の星図の別のコマがあるのかどうかはわかりません。
_ 玉青 ― 2013年02月18日 20時57分40秒
余韻と可能性を残してのグッドエンド。
まずはめでたしめでたし…といったところですね。(^J^)
まずはめでたしめでたし…といったところですね。(^J^)
_ 霜ヒゲ ― 2013年02月19日 07時55分54秒
りゅう座の頭部もほうおう座も随分と明瞭に確認できますね。
ほうおうの後ろの煙は灰の中から蘇ったばかりのフェニックスの灰けむりのようにも見えます。
広瀬秀雄氏が敗戦で神通力を失った魔術師(抱影翁)に再び神通力を取戻してもらおうと翁の自宅までかついでいったという「彗星全集」の銅版画にふさわしい姿だと思いました。
S.U様、玉青様、こちらこそありがとうございました。
ほうおうの後ろの煙は灰の中から蘇ったばかりのフェニックスの灰けむりのようにも見えます。
広瀬秀雄氏が敗戦で神通力を失った魔術師(抱影翁)に再び神通力を取戻してもらおうと翁の自宅までかついでいったという「彗星全集」の銅版画にふさわしい姿だと思いました。
S.U様、玉青様、こちらこそありがとうございました。
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ここで、ちょっと本題の円形星図からずれて申し訳ありませんが、お問い合わせをさせて下さい(以前に同じお尋ねしたことがあったもしれません。)
メルカトル型(あるいはその他の長方形型)の黄道中心星図で、りゅう座が上辺の端にそって左右の端から端までベターっとのたっているものすごい迫力の星図を見たことがあります。何という星図だったか憶えていないのですが、ご存じでしたらご教え下さい。見たのは、国内の書店か図書館で見た西洋の星図でした。ずっと昔のことで、インターネットや海外で見たわけではありません。(今、ネットで探してもその画像がなかなか見つかりません)