虹のかけら(2)…リアル人造虹製造猿2014年02月07日 21時16分06秒

ベルリオーズ作曲「幻想交響曲」第5楽章、「魔女の夜宴の夢」。
ネットラジオからその旋律が流れてきた夕刻、ちょうどカラスが鳴きだしました。おや?と思ったら、その後もカラスは巧みな間合いで鳴き続け、大いに不思議の感を催しました。まあ、原曲のリズムと演奏のテンポが、たまたまカラスの自然な鳴きの間隔と一致しただけでしょうが、曲も曲であり、素敵に妖しいひと時でした。

ようやく自分の身体に戻って、こうしてどうでもいいことを書く元気も戻ってきました。
前回からずいぶん間が開いてしまいましたが、虹の話題を続けます。

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昭和初期、街頭で多くの人の喝さいを浴びた人造虹製造猿
たしかに、それはクラフト・エヴィング商会という手練れの幻影師が生み出した、美しい一場の幻にすぎません。
しかし、私はそれが単なる幻とは言い切れないことを知っています。なぜなら、私は人造虹製造猿の「亜種」を所有しているからです。


RAINBOW IN YOUR HAND。 掌中の虹。


その正体は、6cm ×13cm の小さな本(この本は、以前、どこかのミュージアムショップで購入しました)。

各ページには黒地に7色の帯がくっきりと印刷されており、これをパラパラやれば…


手の中に見事な虹のかけはしが!(…と言いつつ、片手でパラパラやりながらカメラを構えるのは難しいので、うまく写りませんでした。)

まあ、他愛ないといえば他愛ないんですが、虹というのは本来他愛ないものだと思います。そして、ここに現出する虹は、光学応用のそれではなく、人間の視覚特性 ― すなわち時間解像度の低さ ― に依拠しており、いわばヒトの脳内にのみ存在するという意味で、いっそう幻めいています。

かといって、では本物の虹が、リンゴや月と同じように外部世界に実在するのか…と問われれば、誰もが一瞬考え込むでしょう。結局、何が実で、何が虚か、追えば追うほど遠ざかるのが虹の本質である…というふうに、何となく奥深そうに(かつ無責任に)この一文を結びたいと思います。


「なるほど、人造虹は見事にできたね。ところで、猿はどうしたの?」と思う方もおられるでしょう。もちろん、猿は私自身が演じるわけです。この紙束を手に、昼下がりの街角に立ち、パラパラやってみせれば、これぞまさにリアル人造虹製造猿。

少なくともこの「猿」だけはリアルな存在に違いありません。(あるいは、それすらちょっと怪しいと思われるでしょうか?)