ガラスの天球儀…19世紀の逸品2014年07月10日 05時51分58秒

昨夜帰宅。雨戸がカタカタ鳴り、台風の接近を告げています。

   ★

ガラスの天球儀といえば、

■クリステン・リッピンコット(著)
 天文学(ザ・サイエンス・ヴィジュアル14)
 東京書籍、1995

という、美しい写真を満載した本のタイトルページにも、ハッとする品が載っているのを思い出しました。


ページの左下に注目。下はその拡大。


美麗といおうか、絶佳といおうか、人間の想像力と手わざが見事に融合した品です。
しかし、キャプションには「天球を描いた宇宙の立体模型(19世紀」とあるだけで、それ以上の詳細は不明。本の隅に目をこらすと、写真提供元として、The Natural History Museum の名が挙がっていて、おそらくロンドンのそれだと思いますが、探し方が悪いのか、検索してもこの天球儀がうまく引っかかりません。これほどの逸品がなぜ?


【2014.10.13 付記】

クレジット表記の記載を見間違えていたので訂正します。この天球儀はThe Natural History Museum ではなくて、The Old Royal Observatory, Greenwich の所蔵でした。

所蔵者によるオリジナルの紹介ページは以下。
http://collections.rmg.co.uk/collections/objects/11214.html
この美しい天球儀は1820-30年頃のフランス製だそうですが、作者は不明。これほどの品の作者が不明というのは、依然謎めいた感じです。

コメント

_ S.U ― 2014年07月12日 10時19分29秒

私は、ガラス製の天球儀を見たことがなかったので、どれほどポピュラーなものかと「ガラスの天球儀」で検索をかけてみますと、「ポピュラー」音楽のタイトルが引っかかりました。これは、1989年の谷山浩子さんの斉藤由貴さんへの提供曲で、例によって歌詞はシュールですが、歌は意外と明るいです。調べますと作曲は崎谷健次郎という別の方でした。
http://j-lyric.net/artist/a00202c/l00eb26.html
https://www.youtube.com/watch?v=Vbz4zfYo2wk

 それはよいとして、この在ロンドンと思われる古い天球儀はどういう起源なのでしょうね。それから、谷山浩子氏はどこで「ガラスの天球儀」を見つけたのでしょうかねぇ。

_ S.U ― 2014年07月12日 10時23分49秒

https://www.youtube.com/watch?v=1HYZHLcM31s
前便のリンクでYouTubeのリンクが別の曲だったようで、訂正します。

_ 玉青 ― 2014年07月12日 14時11分47秒

本当ですね。谷山浩子氏、あるいは作詞者の崎谷健次郎氏が、どこから「ガラスの天球儀」の想を得たのか不思議です。純粋にイマジネーションで生み出したとしたらすごいですね。まあ、いくぶん散文的に考えると、戦後、プラスチック製の透明天球儀が教材として普及するようになったので、そのあたりからイメージしたのかも…
http://suzuky.exblog.jp/12090047/

_ S.U ― 2014年07月12日 19時18分26秒

>プラスチック製の透明天球儀
 プラスチック製は見たことがあるように思います。

 でも、プラスチックの軽っちい感じの天球儀から、ガラス製を思い浮かべ、内部が土砂降りだの星座が壊れるだのをイマジネーションで生み出したとしたらやはりその作家はただ者ではないでしょう。まあ、少なくとも、この方面の作詞で谷山浩子氏がただ者でないことはすでに他の作品でわかってはいるんですが。

スズキヨシカズさんご所有の天球儀の教育的配慮は、内部に地球があるので、この種の透明天球儀のアイデアは、セラリウスのセノグラフィアが起源とみました。

_ 玉青 ― 2014年07月13日 11時48分44秒

天球の古来のイメージは、星をちりばめたエーテル状の透明な元素から成る球殻というものでしたから、ガラスを素材にそれを視覚化したいというモチベーションは、ずいぶん昔からあったと思うんですが、近代以前は技術がついていかなかったんでしょうか。下のウィキの画像も18世紀中葉のイギリス製です。
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Celestial_glass_sphere.jpg

絵画の世界ではその制約がありませんから、中世、ルネサンスの絵画にもその作例がありそうな気がします(今ぱっと出てきませんが)。セラリウスの絵の中にも、いかにもガラス球っぽい表現のものが見られますね。

_ S.U ― 2014年07月13日 16時30分58秒

>エーテル状の透明な元素から成る球殻
 そうですね。誰が言い出した説かは確認していませんが、アリストレテレスからガリレオの天文対話くらいまでのあいだの西洋の天動説は、「水晶のような物で出来た球殻」の一つが恒星天でした。(ただし、天の物質と地の物質は別物だったので、水晶そのものではなかったはずです) ガラスの天球儀のイメージは、そういうところからも入手可能ですね。

 それでも、それを外から地球が見えるように絵に描く、というアイデアにセラリウス以前のものが見つかればそれはそれで興味深いので、またご紹介下さい。

_ 玉青 ― 2014年07月13日 21時28分42秒

了解しました。透明な天球探し、ゆるゆると続けることにいたします。

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