東欧スペースアートの金字塔…スタフルスキーの世界2014年07月20日 11時11分31秒

2年前の記事で、宇宙ものの児童書を異常な努力で収集されている、ジョン・シッソン氏のブログ「Dreams of Space - Books and Ephemera」をご紹介しました。


その後もブログの更新はやまず、今日たまたま覗いたら、最近アップされた何とも素敵な本の紹介が目に留まったので、こちらでも勝手便乗します。


今回紹介されていたのは

■マレク・コレイヴォ(著)、マリアン・スタフルスキー(画)
  『宇宙船にて』
  ナーシャ・クセンガルニャ社(ワルシャワ)、1968

という本です。シッソンさんが手に入れたのは、ポーランド語版原著からロシア語に翻訳された版で、たぶん旧ソ連向けに輸出されたものでしょう。

記事は2回に分けて掲載されています。

ストーリーはシッソンさんも分からないそうですが、とにかく挿絵がすごいです。「渋いけれどもカラフル」な、この独特の色彩感覚に圧倒される思いです。線のタッチも、一見素朴でありながら完成されており、いわば山下清的というか、棟方志功的というか、ああいう世界ですね。1つ1つの挿絵が、アート作品として自立していると感じられます。

挿絵を手がけたのは、上述のとおりマリアン・スタフルスキーという人で、一見女性っぽいですが、東欧では英語圏とちがって、「マリアン」は男性名です(ちなみに、女性なら姓はスタフルスカ、あるいはスタフルスカヤになるはず)。原記事のコメント欄に寄せられた情報によると、スタフルスキー1931年の生まれで、1980年には早くも亡くなったそうです。ポーランドではいくつもの賞をもらった、有名なアーティストの由(参照 https://www.contemporaryposters.com/category.php?Category_ID=133)。

   ★

時はアポロが月に着陸する前年。
ベトナムでは米軍によるソンミ村の大虐殺が起こり、東側諸国ではソ連のチェコ侵攻によって動揺が広がった時期。
時の為政者は、人々の目を地上の矛盾から宇宙に向けさせようと必死になっていた…という側面もあるとは思います。それでも、その路傍に咲いた花々のなんと可憐であることか。