雪のフラクタル2015年01月02日 10時45分41秒

元日に続き、新年二日目も雪です。
人間は実によく出来ているもので、「無の刺激」にも反応するのですね。
今朝は、周囲があまりにも静かなのに驚いて目が覚めました。

   ★

雪にちなむ品で、以前、こんなものを買いました。


雪片の写真(※)を額装したもので、裏面を見ると、こんなシールが貼られています。


「雪片でできた雪片」
作者は、雪の写真師として有名なウィルソン・A.ベントレー(1865-1931

(額に同梱されていたリーフレットより)

ベントレーは、少年時代に雪の結晶に魅せられ、農業の傍ら、ガラス乾板を使って5000枚以上もの結晶写真を撮り続け、独身のまま生涯を終えました。亡くなったのは、その主著にして、唯一の写真集である『Snow Crystals』(1931)が出た直後のことです。まあ、一種の奇人といえば奇人ですが、すこぶる魅力に富んだ奇人です。


この作品は、ベントレーが自分の撮りためた写真を加工して作った、自作のコラージュ。その動機が、単なる遊び心なのか、雪片をより美しく見せたいという切実な思いだったのかは不明ですが、実に繊細で、幻想性を帯びた作品に仕上がっています。

   ★

ベントレーは、アメリカ北東部・バーモント州の田舎町ジェリコに生まれ、そこで生涯を送りました。地元のジェリコ歴史協会(Jericho Historical Society)は、この先人を顕彰して、古い水車小屋を改装して常設展を開いたり、ウェブサイトを開設したりしています。

Snowflake Bentley (ジェリコ歴史協会)
 http://snowflakebentley.com/

上の額は、そのオンラインショップ(http://vermontsnowflakes.com/index.shtml)で購入したものですが、同ショップでは他にも、雪の結晶をモチーフにした、ピューター製のオーナメントやブローチ、色とりどりのサンキャッチャーなど、いろいろな品を扱っていて、見ていて愉しいです。


(※)このプリントは、同協会が保有するベントレーのガラス原版を元に、印刷によって複製した品で、紙焼き写真ではありません。

コメント

_ S.U ― 2015年01月03日 08時30分10秒

 ベントレーは遊び心か芸術のためにこの作品を作ったとすると少し意外に思いました(といっても、ベントレーがどんな性格の人かはまったく存じないのですが)。もし、これの原版が「コマ合成写真」であるならば、ベントレーは合成写真の位置精度に技術的な関心があったというのはどうでしょうか。

_ 玉青 ― 2015年01月03日 09時46分48秒

記事中でリンクしたオンラインショップでは、類似商品として、雪片で作った十字架のコラージュというのを売っています(http://vermontsnowflakes.com/cross.shtml)。その説明を読むと、ベントレーは雪片の紙焼き写真を切り抜き、黒い台紙に並べて貼り付け、最後に全体を写真に収めて作品とした由。この「雪の十字架」は、親しい人の結婚祝いや、クリスマス・プレゼントとして配ったそうで、「雪片の雪片」も、あるいは同じような意図があったのかもしれません。少なくとも、他の人に雪片の美しさを最大限アピールしたいという気持ちが、そこにこもっていたのは確かだろうと思います。

_ S.U ― 2015年01月03日 19時17分20秒

>黒い台紙に並べて貼り付け
 合成写真ではなくコラージュ?だったのですね。予想が外れてちょっと残念。
 親しい人への贈り物なら、見た目の性格はあまり関係ないかもですね。

 バーモント州に対抗してというわけではないですが、茨城県古河でも土井利立の『雪華図説』にちなんで雪の結晶グッズをいろいろ売りだしているようです。私は残念ながら所有していませんが、一応、地元(県内)ということで宣伝させて下さい。
http://culture.city.ibaraki-koga.lg.jp/rekihaku/index.htm
ほか、検索するとお菓子やハンカチやカップなども出ているようです。日本人は実用志向ですね。

_ S.U ― 2015年01月03日 19時25分53秒

訂正します。土井利立 ではなく 土井利位 です。

なお、ベントレーと土井の議論は、2008年新春の本欄でもさせていただいたので7年ぶりです。

_ 玉青 ― 2015年01月04日 10時25分17秒

言葉通りの意味のコラージュ(糊付け)ですね。(^J^)
技術的には至極素朴な技法ですが、背中を丸めてちまちま切り貼りしているベントレーの姿は、それはそれで微笑ましく想像されます。

>2008年

え、もうそんなになるのですか。早いですねえ。
古河歴史博物館のページをご紹介いただき、ありがとうございました。
改めて土井利位という人を振り返ると、すごい人ですね。幕府のエリートとして、政敵と暗闘の末に老中首座まで昇りつめ、幕政改革に辣腕をふるった強面の人物と、「雪の殿様」のイメージがどうも一致しませんが、人間としての深い奥行きを感じます。“ご家老”鷹見泉石との二人三脚ぶりも興味深いですし、この辺は大河ドラマにしてもいいぐらいですね。

_ S.U ― 2015年01月05日 21時16分54秒

>大河ドラマ
 大塩平八郎や渡辺崋山やら儒学者、蘭学者、いろいろ好き勝手なことを言う歴史上の有名人を集めてドラマにするとユニークなのができるかもしれませんね。

 この時代は、フラットな文化・文政時代と開国期のあいだの世の中じり貧の時代ですから、今まで大河ドラマになったこともなく、一工夫ふた工夫必要でしょう。芸術家やら渡世人がドラマとして面白い一種アウトローが栄えた時代だったのかもしれません。現代に通じるところが多いと思いますが、それもあまり身につまされると娯楽としては善し悪しでしょうね。

_ 玉青 ― 2015年01月07日 07時05分44秒

一癖ある連中が入り乱れる、見ごたえのある歴史絵巻ですね。
でも、下手な脚本家だと「船頭多くして…」になってしまうので、ぜひ筆の立つ人にお願いしたいです(三谷幸喜さんあたりですかね)。

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