澁澤邸のアストロラーベ(1) ― 2019年04月27日 13時50分08秒
稀代の文人、澁澤龍彦(1928-1987)。
その生没年を年号でいえば、すなわち昭和3年と昭和62年です。いわば、彼はまるまる昭和を生きた人。まあ、いちいち年号にとらわれる必要もないですが、平成が終わろうとする今、澁澤なき時代も早30年を超えたんだなあ…と思うにつけ、当時のことがしみじみ思い出されます。
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彼の書斎については以前も書いたことがあります。
あのたたずまいに憧れた人、そして深い影響を受けた人は少なくないでしょう。私もその一人で、今でもふと、自分が「澁澤ごっこ」をしてるだけなんじゃないかと、後ろめたく感じるときがあります。
しかし澁澤の場合、「オブジェ好き」を自認してはいても、コレクター的偏執は薄かったので、わけもなく物量に走ることなく、あの洒落た部屋に見苦しいまでにモノが堆積することがなくて済んだのは、彼自身にとっても、彼のファンにとっても甚だ幸いなことでした。
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ところで、澁澤が手元に置いた品の性格に関していうと、彼は自然万般への関心は強かったでしょうが、特に天文に傾倒した形跡はないので、その収集物にも天文関係の品はごく少ないように見えます。そうした中で異彩を放つのが、彼が自らイランの古道具屋で求めた、大小のアストロラーベです。
(澁澤の書斎の一角。篠山紀信撮影「季刊みづゑ」1987年冬号より)
(同拡大)
「昭和の日」を前に、澁澤のアストロラーベに一寸こだわってみます。
(この項つづく)
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