青い星座カードの話(3)2020年08月26日 06時17分47秒

(昨日のつづき)

1955年に登場した『STAR GAMES』。
この心憎い星座カードは、1974年に『CONSTELLATION』と名前を変えて、改訂版が売り出されたことを、その後知りました。


カードの構成はまったく同じ。6枚が解説カードで、30枚が星座カードです。
しかし、一見すると同じに見えるこの2つのセット、もういっぺん見ると明らかに違います(改訂版たるゆえんです)。


上は1955年版、下は1974年版のしし座。
地色が紺から明るい青に変わったのもそうですが、星座の表現がよりポップになっています(フォントもゴチックになりました)。時代の空気に合わせて、アップデートしたわけです。(※)


そんな違いはありますが、版権表示を見れば、両者はやっぱり同一製品だと分かります。ただ、版権保有者が、版元の Naturegraph 社から、著者である Vinson Brown 氏個人に移動していますが、これはたぶん税金の絡みか何かで、ネイチャーグラフ社は、ブラウン氏の個人会社だと思います。

さらにその後、この1974年版は、1988年まで版を重ねていたことを知りました。

(参考写真。eBayに出ていた1988年版。中身は1974年版と全く同一のようです)

   ★

ここで改めて、一連のカードゲームの著者であるブラウン氏について調べてみます。
ネット情報によれば、ヴィンソン・ブラウン(Vinson Brown 、1912-1991)は、カリフォルニアのナチュラリスト/人類学者。ネイティブ・アメリカンの文化と信仰に一生涯興味と敬意を抱きつづけ、出版人として、また自ら執筆者として、37冊の本を上梓した。」という経歴の人だそうです。

となると、ブラウン氏は単なるゲーム屋の親父さんではなく、深い思慮があって、この星座カードを作ったのであろうと、ボンヤリ想像されました。そして、最晩年までそれを出版し続けたことから、ブラウン氏の思い入れの深さも感じました。
これまた星と人のかかわりを窺わせるエピソードには違いありません。

   ★

こんなふうに1枚の絵葉書からスタートして、一人の人間の生きざまにまで心の視野が広がるならば、このちっぽけなブログを続けることにも、多少の意味がある…と、ひそかに思います。

(この項おわり)


(※注) 1955年版は、H.A.Rayの『THE STARS』の星座絵を、1974年版は、W.T.Olcottの『Field Book of the Skies』(第4版)の星座絵を参照したことが、解説カードには書かれていました。

(H.A.Ray 『THE STARS』 表紙)

コメント

_ S.U ― 2020年08月26日 07時50分59秒

おぉ、懐かしいカードの再版ですね。
 昔、二重星の観察確認までして議論させていただいたしし座のアルギエバの「黄緑色」も変化ありませんね。

 おっしゃるように、これは著者の思い入れがあるのでしょうね。初めて星座を憶え始めた頃のよい思い出が深いのでしょうか。

[ついで・その1]
我々の天文同好会の会誌の新号(第63号)を発行しました。上のURLでご笑覧をたまわりますばありがたいです。

[ついで・その2]
 ご紹介のH.A.Reyの本の表紙のふたご座の線のつなぎ方が、我々の天文同好会誌の前々号(第61号)に紹介したものとたまたま一致していたので驚きました。(これは、どーでもいい話です)

_ 玉青 ― 2020年08月27日 07時59分41秒

おお、アルギエバ。
S.Uさんに指摘されるまで、まったく忘れていました。
http://mononoke.asablo.jp/blog/2008/03/02/2684272
何と12年前ですか。
ブログ世界では、こうして同時に存在している情報が(実際、読み返すと瞬時にその場に戻れる感覚があります)現実世界では12年という長い時を隔てているのが、実に不思議な感じです。これは人間の記憶の不思議さに通じるものがありますね。

   +

「銀河鉄道」最新号のお知らせ、どうもありがとうございました。
今号もS.Uさんのアポロに寄せる思いに、圧倒されました。
ここでも記憶の不思議さを、そして「物理的な時間」と「生きられる時間」の対比を考えないわけにはいきません。
次回以降も、ますます楽しみです。

_ S.U ― 2020年08月27日 11時36分29秒

>「物理的な時間」と「生きられる時間」
 自然の法則に従えば、過去の記憶は、熱力学の第2法則に従い、多くの場合、指数関数的に減衰していくものと思いますが、生物、特に人間が絡むとそうはいかないのですね。さらに現代では、サイバー空間というさらに特異な環境が出てきました。

 自然にとって、人間のこの状況はさぞ厄介なものと思いますが、その前に人間にとって厄介であることがまず問題になるでしょう。

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