最後の絵葉書2014年05月16日 07時04分23秒

1910年のハレー彗星騒動は、ちょうどこの時期でした。

前年の9月に、天文台の大望遠鏡がようやくその存在を察知した彗星は、年明けの春からぐんぐん光度を増し、「翌1910年2月に8等級、〔…〕4月に2等級となり、8度ほどの尾を見せた。5月11日には最も明るく、0.6等となり、尾はさらに長くなり、5月14日に58度、16日に70度、19日に105度、21日には120度となった」(ウィキペディア「ハレー彗星」の項より)。

運命の日は5月19日。
この日、ハレー彗星の尾が地球をかすめ、その尾に含まれる猛毒シアンによって、地球上の生物はすべて死滅する!という噂が流れ、人々は戦々恐々としていたのです。

そんな時代の気分を反映して、ハンブルグではこんな絵葉書も作られました。


長々と尾を曳く凶星が告げるメッセージは、「Die letzte Ansichtskarte(最後の絵葉書)」。 これまで無数の絵葉書が刷られてきたが、いよいよそれもおしまいだ…という不気味な声が天から響いています。

…と思いきや、よく見ると右下には「ist Dies noch lange nicht!!(…は、まだまだ遠い先である!)」とあって、一種のジョーク絵葉書であることが分かります。

   ★

1910年のハレー彗星騒動は、面白おかしく語られることが多いですが、当時の新聞を見ると、紙面をにぎわしているのは相変わらず、政治、経済、三面記事ばかりで、全人類がひたすらハレー彗星に恐れおののいていた…というのは、事実に反します。
まあ、せいぜい先年の「マヤの予言(2012年に人類は滅ぶ)」ぐらいの重みではなかったでしょうか。