天文雑誌に見る1950年代(2)2014年10月19日 09時37分39秒

(昨日のつづき)

さて、特筆大書すべき貴重な宝とは何か。
それは「Sky & Telescope」の日本版です。

「Sky & Telescope」は1941年に創刊された、アメリカで最も有力なアマチュア天文誌。日本でも、ディープなマニアには近しい存在で、「スカテレ」の愛称で呼ばれます。

「スカテレ」に日本版があったというのは、故・草下英明氏の『星日記―私の昭和天文史1924~1984』(草思社、1984)を読んで知ったことで、ずいぶん以前も記事にしました(http://mononoke.asablo.jp/blog/2007/11/16/)。


煩をいとわず、関係する部分を再掲します(コピペなので楽ちんです)。

〔1950年〕 11月30日
 アメリカの天文雑誌「スカイ・アンド・テレスコープ」の日本語版というのが発刊された。「スカイ・アンド・テレスコープ」は、アメリカの数少ないアマチュア向けの天文雑誌で、私どもも大変愛読しているものであるが、京大工学部教授で天体写真家でもあった藤波重次が日本語版の権利を取得して編集発行したものである。京都市の三一書房が発行所となっているが、現在ある東京の三一書房とは関係ない。礼文島の金環食写真の記事などが中心に構成されているが、最近のように天文熱が盛んでなかったため、時期尚早で気の毒にも一号出ただけでおしまいになってしまった。
                                        (上掲書、p.125)

このことに触れた元記事は、2007年11月に書かれたものです。
それに対して、2012年にコメントを頂戴したのが、今回資料をお譲りいただいた是澤さんで、そのときは一回メールをやりとりしただけで終わったのですが、それからさらに2年経った今月、「そういえば、以前メールでご依頼のあった件ですが…」と、是澤さんから再度お便りをいただきました。思えばずいぶん悠長なやりとりです。せわしない現代にあって、それ自体貴重なことであると、何だかとても嬉しくなりました。

   ★

さて、これが1950年に出た日本版「スカイ・アンド・テレスコープ」の現物。


この雑誌は、いったいどれぐらい貴重なのか?
検索すると分かりますが、これは現在、国会図書館にも収蔵されていません。
大学図書館横断検索にあたっても、所蔵するのは全国でただ1館。それも大学図書館は全滅で、公立の宮城県図書館が所蔵しているだけです。こういう例はごくまれだと思います。

そして、ここでさらに声を大にして言わねばならないことがあります。
それは草下氏の文章には、事実誤認が含まれていることです。そのことは、是澤さんにコメント欄で教えていただきました。即ち、「貴方様は一号のみの発刊で終わっているとおっしゃっていますが、1950年11・12月号、1951年1・2月号、1951年3・4月号の計3号が三一書房より発刊されています。」

宮城県図書館が所蔵するのも、1950年11月に出た第1号のみですから、是澤氏旧蔵の第2号と第3号の2冊は、まさに天下の孤本と称すべきもので、少なくとも、それを公に見る方法は現在ありません。

どうです、すごくはないですか?
内容はひとまずおいて、その希少さにおいて、これが極めて貴重な資料であることは、お分かりいただけるでしょう。

では、気になるその中身はどうか?

(この項、更にもったいぶって続く)