チープな華やかさ…セロハンスライドの世界2015年01月25日 17時11分16秒

地球より重く 鴻毛より軽き 命かな
こういう折に記事を書くべきかどうか悩みますが、書きます。

   ★

例によって時代は曖昧ですが、1920~30年頃のセロハンスライドを買いました(昨日の記事では、セロハンスライドを1930年代と書きましたが、このセットは絵的にもう少し古い気がします)。

理科教育用に作られたもので、電気とか、気象とか、12枚1セットでいろいろなテーマを取り上げているのですが、今回はとりあえず天文をテーマにしたセットを載せます。


上の写真で、絵柄がしわしわになっているのが見えますが、これは絵が直接ガラス面に載っているのではなく、セロハンに刷ったものをガラスにはさんであるからです。セロハン自体は一色刷りで、おそらくそこに合羽刷り(ステンシル)で色を塗ったものと思います。


今回まとめてこれらのスライドを買ったのは、端的に言って安かったからで、送料の方がむしろ高くつきました。この手のスライドは、おそらくスライドのコレクターからは、あまり重視されていないのでしょう。


「Loi du carré 二乗の法則」。
光源からの距離と明るさの関係を示す図です。
家族に背を向ける右端の暗い少年は、何だか「禁書」を読んでいるような背徳感があって、好感度大。

それにしても、この味わいを何と表現すればいいのでしょう?
かすれた印刷、安っぽい色使いが、一種「チープな華やかさ」を醸し出しており、まるで駄菓子屋の店先のようです。モノがセロハンだけに、いっそうお菓子めいたエフェメラ感があって、そこに懐かしい魅力があります。


日食の説明図。


「日食の恐怖」。
天文の話題が、にわかに歴史的場面に転換し、かつオリエンタリズムが混入するあたりに、フランスの国柄と時代性を感じます。


「地球照」。地球からの照り返しによって、月の黒い影の部分が、ボンヤリ明るく見える現象です。これまたオリエンタリズムが濃厚な絵柄。


月の満ち欠け。上は満月、下は新月。
藤城清治の影絵芝居めいた、素朴でお伽チックな絵が良い感じ。



ニュートンはもちろんフランスでも尊敬の対象です。


等速直線運動しながら落下する砲弾の軌跡。


その月への応用。「Chute de la Lune 月の落下」。

   ★

子供達の横顔を、ゆらゆら照らす幻灯の明かり。
先生のくぐもった声。
つかの間の科学のファンタスマゴリア。

コメント

_ S.U ― 2015年01月26日 19時22分25秒

セロファンのスライドは、子どもの頃の月刊誌の付録を思い出して、涙がでるほど懐かしいです。

 下から2枚目、「今日の砲弾の落下は、明日の人工衛星!」が気に入りました。(これでは、砲手の背中か腰に砲弾が命中することになりますが)

_ 玉青 ― 2015年01月26日 21時45分22秒

>背中か腰に砲弾が命中

あはは。剣呑ですね。
それと砲弾にやられる前に、反動で砲台にぶっ飛ばされる恐れもありますね。

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