ある雪もよいの日に2016年01月23日 20時36分24秒

よお。
―やあ、珍しいね。去年、本八幡で会って以来か。

どうだい、調子のほうは?
―まあ、元気は元気だけど、この寒さじゃ外に出るのもおっくうで。

まったくだ。ほら、とうとう白いものが降ってきたぜ。
―え?…あ、本当だ。

これは手土産。お前さんの好きな濁り酒。
―あれ、ずいぶん気が利くじゃないか。

持つべきものは友だろ? さあ、さっそく味見といこうぜ。
―なんだ、自分が飲みたかっただけか。まあいいや、器はこのグラスでいいかい。…ああ、いい香りだ。

うん、なかなかいける。
―それにしても、雪を見ながら、こうして酒を飲んでいると、なんだか昔のことを思い出すね。思えば君と出会ってもう10年か。十年ひと昔というけど、いつの間にかずいぶん長い付き合いになったね。

お得意の回顧モードだな。まあ、十年一日とも言うけどな。
―はは、たしかに長いようで、あっという間だったもんね。

お前さんが、例のブログを書き始めたのがちょうど10年前。どうだい、振り返っての感想は?
―うーん、正直、あんまり感慨も湧かないね。これが例えば、10年かけてゆっくり成長して今がある…というなら、己の軌跡を顧みて、多少の感慨も湧くんだろうけど、10年前の自分が書いているのをみても、結局今とおんなじようなテーマで、おんなじような感想を書き付けているんだから、それこそ十年一日、長い一日をずっと過ごしているような気がするよ。

10年前から完成されてたっていうなら、立派なもんじゃないか。
―ほら、そうやってまた茶化す。まあ、成長がないことを完成というなら、そう言ってもいいさ。

まあ、何にせよ10年間よく続いたよ。それはお世辞抜きで感心する。もっと自分をいたわってやれよ。
―ありがとう。そうするとしようか。

   ★

さて、このあと二人は、この10年間の世間の変化をあれこれ語り合いながら、だらしなく酔いつぶれてしまうのですが、私も文中の青い人と同様、10周年を迎えたからといって、格別の感想は何も思い浮かびません。
…いや、本当はいろいろあるのですが、どうもうまく文字にできないので、白いものが舞い飛ぶ夜空を思いつつ、黙って独酌することにします。

とにもかくにも、今しばらくは続く予定ですので、懲りずにお付き合い願えれば幸いです。