英雄たちの選択…ある古書の場合(前編) ― 2022年11月05日 10時35分31秒
古書の状態表示は、英語だとまずFine(新品同様)、Near Fine(ほぼ新品同様)から始まって、Very Good(良好)、Good+(まずまず)、Good(経年並み)と続き、最後にFair(可)というのが来ます。
GoodとFairは、業者によっても相当判断に幅がありますが、少なくとも「状態がいいとは言えない」ということで、「古書のGoodはGoodではない」というフレーズが囁かれるゆえんです。さらにFairともなれば、相当ボロボロの本を覚悟しなければなりません(日本の業者なら、はっきり「状態悪し」と書くところです)。
しかし、下には下があって、さらに「Acceptable」という表現があります。これはFairと同義で使われることもありますが、区別する場合は「本として読めないことはない」、すなわち商品として流通しうる下限に相当し、これより状態が悪ければ、すなわち紙屑です。
★
…というのが話の前置き。
先日のマックノート氏の本に触発されて、1冊の本を注文することにしました。
その時点でネット上に売りに出ていたのは、以下の3点です。
1冊は判型が初版よりも一回り小さい後版で、状態の良くないもの。残りの2冊は初版ですが、1冊は上記の「Acceptable」で、状態は極め付きに悪そうです。最後の1冊は申し分のない美本ですが、お値段はウン万円以上するし、しかも海外発送はしない業者の取扱品です。
さて、ここで一番賢明な振る舞いは何か?
NHKの歴史番組「英雄たちの選択」よろしく、そのときの私の心のうちに分け入ってみましょう。
選択A 「ふーむ、同時に3冊も市場に出ているということは、この本は決して稀本ではないのだろう。だったら、もう少し待てば、まずまずの状態で、もっと値頃の品が出てくる可能性は高い。ここはいったん購入を保留して、好機を待つのはどうか。」
選択B 「いや、古書との出会いは一期一会。ここで出会いを無下にして、あとで後悔しても遅い。ここはあの美本に目星をつけて、まずは先方と発送の可否や価格について交渉してみるのが良いだろう。最終的な選択はそれからでも遅くはないはずだ。」
さて、皆さんだったら、どんな選択をするでしょう?
まあ、これはどちらも理のあることで、たぶんAを主体にして、Bを並行して試みるというのが、磯田先生(「英雄たちの選択」の司会者)的には正解だと思います。
★
しかし私が最終的に選択したのは、そのいずれでもなく「Acceptable」な1冊でした。
果たしてそれがどんな結果を招いたか、それを以下に書きます。
(この項、緊張感をはらみつつ続く)
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。