鉱物本書誌 ― 2008年11月01日 22時04分32秒

(↑博物系古書肆ユンクで現在売りに出ている、Kurrの『鉱物界図説』初版。1,000ユーロ也。※動作が変なのでユンクへのリンクを一時外します)
たぶんもう一寸すると状況は変わってくると思いますが、本に関する情報、すなわち書誌というのは、今の時代でもなかなか調べるのが厄介で、結局最後はその筋の人に教えを乞わないと分からないことが多いように思います。
でも鉱物学については、こんなに至れり尽くせりのページが既にありました。
■The Library: Curtis Schuh’s Biobibliography of Mineralogy
http://www.minrec.org/library.asp
アメリカの鉱物愛好家、故Curtis P. Schuh氏(1959-2007)の畢生の業。15~20世紀初頭の鉱物学・結晶学の古書について調べようと思ったら、まず最初に参照すべきデータベースではないでしょうか。
試みに、前回話に出たKurrの項を見てみます。そうするとKurrの略伝と著作、さらに版による異同が詳細に解説されています。
経歴を見ると、Kurrはポリテクでも鉱物学を講じていたので、前回「鉱物学に関してはアマチュア」と書いたのは間違いでした。訂正しておきます。
『鉱物界図説』については、初版が1858年に出た後、69年、71年、75年にそれぞれ細部の違う第2版が、また78年と84年には同じく第3版が出ていることが詳述されています。さらに1859年から97年にかけて出た、イギリス版、フランス版、アメリカ版、ハンガリー版、ロシア版についても解説があります。
愛書趣味家は、各版の違いがどこで、どの版が最も購入に値するのか気になると思いますが、解説を読むと以下のことが分かります。
まず、1858年に出た初版の図版は手彩色ですが、1869年以降に出た版では、図柄は同じですが、新たに多色石版画(クロモリトグラフ)で版を起こしています。そして、両者は図版の上部に”Tab.(図)”の文字があるか(=手彩色)、ないか(=クロモ)で容易に見分けることができる、と書かれています。この区別は各国語版についても同様で、1859年に出たフランス版とイギリス版では手彩色図版が、それ以降の版ではクロモが使われており、いずれも図版頁は、原著と同じものを版元が供給したもので、各国で新たに版を起こしたわけではないことも分かります。
他にもテクストや装丁の異同がいろいろとありますが、こと図版に関しては、本書は初版が最も価値あり、と言えそうです。確かにネット上で見ても初版はグッとお高くなっていますね。
…とまあ、一事が万事この調子で、記述は詳細を極めます。
★
このデータベースをパラパラ見ていると、さしものKurrも、鉱物趣味の滔々たる大河の一滴に過ぎないことが分かり、斯界もやはり相当奥が深いようです。(Schuh氏は、『鉱物界図説』のことを、当時の「通俗的“コーヒーテーブル”ブック」と表現しています。一寸扱いが軽いですね。)
たぶんもう一寸すると状況は変わってくると思いますが、本に関する情報、すなわち書誌というのは、今の時代でもなかなか調べるのが厄介で、結局最後はその筋の人に教えを乞わないと分からないことが多いように思います。
でも鉱物学については、こんなに至れり尽くせりのページが既にありました。
■The Library: Curtis Schuh’s Biobibliography of Mineralogy
http://www.minrec.org/library.asp
アメリカの鉱物愛好家、故Curtis P. Schuh氏(1959-2007)の畢生の業。15~20世紀初頭の鉱物学・結晶学の古書について調べようと思ったら、まず最初に参照すべきデータベースではないでしょうか。
試みに、前回話に出たKurrの項を見てみます。そうするとKurrの略伝と著作、さらに版による異同が詳細に解説されています。
経歴を見ると、Kurrはポリテクでも鉱物学を講じていたので、前回「鉱物学に関してはアマチュア」と書いたのは間違いでした。訂正しておきます。
『鉱物界図説』については、初版が1858年に出た後、69年、71年、75年にそれぞれ細部の違う第2版が、また78年と84年には同じく第3版が出ていることが詳述されています。さらに1859年から97年にかけて出た、イギリス版、フランス版、アメリカ版、ハンガリー版、ロシア版についても解説があります。
愛書趣味家は、各版の違いがどこで、どの版が最も購入に値するのか気になると思いますが、解説を読むと以下のことが分かります。
まず、1858年に出た初版の図版は手彩色ですが、1869年以降に出た版では、図柄は同じですが、新たに多色石版画(クロモリトグラフ)で版を起こしています。そして、両者は図版の上部に”Tab.(図)”の文字があるか(=手彩色)、ないか(=クロモ)で容易に見分けることができる、と書かれています。この区別は各国語版についても同様で、1859年に出たフランス版とイギリス版では手彩色図版が、それ以降の版ではクロモが使われており、いずれも図版頁は、原著と同じものを版元が供給したもので、各国で新たに版を起こしたわけではないことも分かります。
他にもテクストや装丁の異同がいろいろとありますが、こと図版に関しては、本書は初版が最も価値あり、と言えそうです。確かにネット上で見ても初版はグッとお高くなっていますね。
…とまあ、一事が万事この調子で、記述は詳細を極めます。
★
このデータベースをパラパラ見ていると、さしものKurrも、鉱物趣味の滔々たる大河の一滴に過ぎないことが分かり、斯界もやはり相当奥が深いようです。(Schuh氏は、『鉱物界図説』のことを、当時の「通俗的“コーヒーテーブル”ブック」と表現しています。一寸扱いが軽いですね。)
最近のコメント