過去記事フォローシリーズ…蒔絵風<彗星の図>の正体2009年09月26日 22時45分22秒

以前、ハレー彗星グッズを集めた本を紹介した際、謎の蒔絵盆について触れました。
http://mononoke.asablo.jp/blog/2009/05/29/4329704

和風なんだけれども、なんだか微妙に西洋風な、正体不明の品として取り上げたのですが、あれの正体が分かったような気がします。

上の図は、灰野昭郎氏の『近世の蒔絵』(中公新書)より。
一見して、構図の取り方や描法が、先の彗星の絵とよく似ていますが、これは灰野氏がロンドン北西部のポートベローの蚤の市で見つけた紙皿です。以下、同書197ページより。


「今度は直径10センチほどの紙皿を見つけた(図50)。
紙皿とは書いたが、その上に漆に似た黒い塗料が塗ら
れている。さらにその上に箔を切って絵が描かれている。
その絵が何と浮世絵なのだ。傘をさした後向きの美人に、
天秤を肩にかけた物売り、また信玄袋をかつぎ、文箱を
もった学者風な人物。いずれをとっても“日本”なのだが、
しかし、ただちに日本製とは受けとれない。物売りの荷に
書かれた漢字は反転して読めない。ヨーロッパ人が作った
“日本”なのである。蒔絵と浮世絵を組み合わせて模した
ものである。」


先の彗星の絵も、よーく見ると、人物の着物の紋がいい加減ですし、画面左上の蝙蝠がどうも中国の工芸品ぽくて、日本出来とは思えません。これもまた、明治期にヨーロッパで作られた「蒔絵もどき」と見て良いのではないでしょうか。

ただ、何か元絵があったのかどうかは依然不明。もっとも、元絵があったにしても、ここに彗星を飛ばしたのは、西洋の工人の仕業ではないか…と想像します。