フェルメールの「天文学者」に見える謎の図 (前編)2012年11月16日 18時52分39秒

お腹を下しました。寒さのせいか、胃腸風邪か、とにかく用心しようと思います。
皆さんもどうぞお気をつけて。

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さて、「謎解き」を、別の話題でも続けます。

日本でも人気の高い17世紀オランダの画家、ヤン・フェルメール(1632-1675)。
最近大きな展覧会が続いたことで、その絵にいっそう注目が集まっているようです。
彼が30代半ばに描いた作品に「天文学者」という絵があります。天球儀に手をかけ、じっと見入る1人の男を描いたもので、現在はルーブル美術館の所蔵です。
 
(ヤン・フェルメール作、「天文学者」。1668年、油彩、カンヴァス、50×45cm。)

この絵は大層有名なので、既にいろいろ考証が加えられており、画中の天球儀は、ヨドクス・ホンディウスが1600年に制作したものであり、また机上に開かれた本は、アードリエーン・メティウスという人の『天文・地理学集成 天球儀と地球儀を利用した天文術基礎研究及び地理記術』の第3巻で、しかもその第2版であることも明らかになっています。また背後の壁にかかる絵は、フェルメールの他の作品にも登場する「モーゼの発見」です。さらに最近になって、天球儀の足元にちらりと見えるアストロラーベは、ウィレム・ヤンスゾーン・ブロイ作のものと判明したのだとか。

実はこの話題、以前S.Uさんから頂戴したコメント(http://mononoke.asablo.jp/blog/2012/09/17/6576010#c6580407)に触発されたもので、上に挙げた各種の考証は、S.Uさんに教えていただいた、Jonathan Janson氏の「The Complete Interactive Vermeer Cataogue」というWEBサイトに書かれた「天文学者」に関する解説(http://www.essentialvermeer.com/catalogue/astronomer.html)が主なソースになっています。

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さて、ここで問題にしたいのは、天球儀の背後、家具の正面にかかっている星図(?)についてです。そこまでいろいろ分かっているのであれば、この図の正体も、すでに明らかなのかと思いきや、上記Janson 氏によれば、「この見慣れぬテクニカルな図面に関しては、3つの円形図がある種の立体投影図だと推定されているものの、あまりよく分かっていない。天球図(planisphere)だろうと考える歴史家もいる」という状況なのだとか。
 
 
(「天文学者」に描かれた謎の図。 上:オリジナル画像、下:コントラストを調整したもの)

フェルメールがこの場面に、空想的な図を描き込むとは思えないので、この図についても、きっと何かモデルがあるのだと思います。しかし、私にも具体的なアイデアがあるわけではないので、この件について天文学史のメーリングリストで質問をしてみることにしました。「この図は現実に存在する図なのでしょうか?存在するとすれば、そのソースは何なのでしょう?」
 
その後、何日間かの間に、いろいろな人から意見が寄せられました。そのうち、「これは」と思ったものをいくつかご紹介します。
(ただし、結論を先にいうと、答は依然不明であり、謎はまったく解けていません。)

(この項つづく)

コメント

_ かすてん ― 2012年11月17日 08時15分36秒

なんなんでしょう、この板。
日時計?

_ 玉青 ― 2012年11月17日 20時50分41秒

おお、これは新しいアイデアですね!
たしかに壁掛け式日時計には、上の絵と似たデザインのものもありそうです。
ただ、窓との位置関係で、このままだと日時計としてうまく機能しないような気がするのと、左右にある小円の意味が分かりにくいのが、難点かと。

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