夢の世界星座早見(3)2014年05月13日 21時15分37秒

こういうのは手に取っていただければ一目瞭然なのですが、昨日の写真はちょっと分かりにくかったかもしれません。全体を模式化するとこんなふうです。


A4(でなくてもいいですが)の紙を4枚重ねて、全体を三つ折りにした状態をイメージしてください。左側にペラペラが4枚、右側にもペラペラが4枚あって、これを中央で重ねる方法は、4×4=16通りあります。件の星座早見もちょうどそれと同じ構造になっています。左側のペラペラが星図盤、右側のペラペラがそれを覆うカバーです。

「え、星図盤が4枚?北天用と南天用の2枚じゃないの?」
と思われるかもしれませんが、この早見には星図盤が4枚付いています。それは普通の星座を刷り込んだもの(アマチュア天文家等の星座学習用、と著者バートンは言います)以外に、ナビゲーション&オリエンテーション用の特殊な星図盤(天測航法などに使うもの。こちらの方がこの星座早見出版の主目的です)が、南北2枚付いているからです。

現物を見てください。

(北天ナビ用)

(北天星座学習用)

(南天ナビ用)

(南天星座学習用)

そして、星図盤を覆うカバー(著者は「マスク」と呼んでいます)の方も、昨日書いたように、緯度20度、40度、60度、80度の4枚あります。
これもズラッと並べるとこんなふうです。

(20度用。半円に近いお饅頭型にくり抜かれています。)

(40度用。20度用と重なっているので分かりにくいですが、手前の楕円形の窓がそれです。)

(60度用。これまた一番手前の窓の形に注目してください。だいぶ円に近付いてきました。)

(80度用。窓の形はもうほとんど円形です。)

これらの星図盤とカバーを組み合わせれば、たとえば昨日のように、


北緯80度用の星座早見も作れるし、


南緯20度で使うナビ用星図もあっという間に完成です。

天の極が頭上にあるか、地平線近くにあるか、それによって星の見え方はどう変わるか、それを表現するために「窓」の形がどうあらねばならないか、図を見ながら考えてみるのも一興かと思います。(注)

   ★

「それにしても…」と思います。
この上質の紙、鮮やかな印刷、プラスチックの綴じ具。これぞアメリカの「物量」を如実に物語るものであり、やはりあの戦は無謀だったなあ…という気がヒシヒシとします(もちろん相手が弱ければ戦争をしてもいい、という意味ではありません)。


【注】
この問題に関する理論的考察は以下を参照。
○上原貞治、「星座早見盤の窓の形」、『天界』1008号(2009年5月)、pp.210-212.

コメント

_ S.U ― 2014年05月14日 07時46分06秒

お陰様でよくわかりました。けっこう複雑な構造なのですね。
 左右を正しい位置にぴったり合わせるためには、かなりの精度と堅牢性が必要だと思います。紙や綴じ具がくたびれてくるとずれだしたりしないのでしょうか。
 
 ご引用の参考文献で触れてあったかどうかは忘れましたが、緯度によって、全天の見える範囲が異なるので、この方式の問題は、緯度の高いところと低いところで窓の大きさがかなりかわるということです。ここまでやるなら、いっそ、高緯度用と低緯度用で星座を描いたほうの板も縮尺を変えるのがよい(高緯度用は中央部を拡大、低緯度用は全体を縮小)と考えます。

_ S.U ― 2014年05月14日 20時57分05秒

すみません。もうひとつ湧いてきた大きな疑問。

 この星座早見って、窓内の星座と時刻を同時に確認しながら星図盤を回転させることが出来ないんじゃないですか? (たとえば、アンタレスは何時何分に昇ってくるのかを回転させながら読み取れない??)

_ 玉青 ― 2014年05月15日 07時12分21秒

>紙や綴じ具がくたびれてくるとずれだしたりしないのでしょうか

間違いなくずれますね。現状だと、2枚のページを重ね合わせた状態でも結構カクカク動くので、窓際の星はしょっちゅう昇ったり沈んだりします。
文中、天測航法という言葉を使いましたが、航海中に経度を決定するような厳密な天測とは違って、この早見盤は大雑把に方位が分かればそれでよしというツールなのでしょう(緯度も20度刻みですから、いきおい大雑把になるわけです)。

>窓内の星座と時刻を同時に確認しながら星図盤を回転させることが出来ない

確かに、この早見は特定の時刻における星の見え方を示すのみで、仰るような使い方を想定していないらしく見えます。まあ、窓越しにでも星座盤はぐりぐり回せるので、アンタレスが窓の縁に来た状態で覆いを外せば、その時刻を知ることもできるわけですが、いかにも面倒くさいですね。

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