夢のつづき ― 2014年06月22日 18時02分58秒
「私はあなただ」と名乗る男と、しばし無言で対峙し、夜の匂いが極限まで強まった瞬間、東の空にかすかな青味が差してくるのが望まれました。
…では、こちらのカードを引かせてもらいましょう。
「ほう、本当にいいのですか?」
ええ。実を言うと、今の今まで、私はどちらのカードも引かないつもりでした。
「私もてっきりそうだと思っていましたよ。」
へえ、あなたの予想も外れることがあるんですね。面白いな。
…私がこちらのカードを引くわけは、単にこの絵柄が気に入ったからです。私にとって、裏のメッセージはどうでも良いのです。この絵柄のカードを手に入れたい、それだけの理由で私はこのカードを選ぶことにします。
「結構です。それを聞いて私もとても嬉しいです。さあ、どうぞ。」
ありがとう。
「では、裏のメッセージもお読みください。もっとも、今のあなたには意味のないものでしょうがね。 では、私はこれで失礼します。そのカードは差し上げますので、大切にお持ちください。またお会いすることがあるかどうかは分かりませんが、どうぞお元気で。」
人気のない街角に男の姿は消え、空は透明な青へ、さらに薄紅色へと変わりつつありました。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。