土星キャラ立ち史(その3)2015年03月17日 07時00分53秒

1990年頃に放映された富士急ハイランドのCMは、鴨沢祐仁さんのクシー君を主人公にしたもので、土星もメインキャラでそこに登場していました。

(YouTubeに、「富士急ハイランドCM 『クシー君とレプス君』鴨沢祐仁」と題してアップされていた動画より。 https://www.youtube.com/watch?v=IlDOFpg6ch0

(同上)

バーのカウンターで、輪っかをひょいと外して挨拶する土星は、いかにも稲垣足穂的趣向。さらにマイク片手の土星も登場しますが、土星が女性に擬せられることは非常に珍しく、派手なゴールドの輝きは、バブル当時の世相を彷彿とさせもします。

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上で足穂の名前を出しました。
彼の第一作品集『一千一秒物語』(1923)には、早くも土星が登場します。

(『一千一秒物語』より「土星が三つできた話」)

まあ、これは土星だか人間だか分からない、人を喰った話ですが、4冊目の『第三半球物語』(1927)には、ホンモノの(?)土星がバーで一杯やっているうちに、輪っかを失くしてしまうという話が出てきます。

(初出時タイトルは「土星とオートモービル」。後に「泣き上戸」と改題され、内容にも手が加わりました。イラストは若き日のタルホ自身によるもの)

実に洒落ているし、私もぜひこんな街に棲んでみたいと思います。
鴨沢さん然り、たむらしげるさん然り、後の作家さんもそう思ったからこそ、タルホ的土星を自作に登場させているのでしょう。

それにしても、そもそも足穂は、どこからこういう想を得たのでしょう?
あるいは、純粋に彼の自由なイマジネーションが生んだ幻影なのか?

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バーで一杯やるかどうかはともかく(これはたぶん足穂オリジナル)、土星の擬人化そのものは足穂以前からあるので、その淵源を探るべく、もうちょっとこだわってみます。