烏瓜の思い出2015年10月09日 07時07分30秒

日が傾くのが早くなりました。
午後の真っ青な空から風がヒューと吹いてきて、大きな樹がサワサワ鳴ると、秋だなあと思います。涼しい季節から寒い季節へと移っていく、この時期の静かな明るさが好きです。

この時期、ふと昔の気分がよみがえることがあります。
皆さんにも、きっとそういう季節の節目や点景があることでしょう。

私の場合、蚊取り線香をぽっと点したり、すっかり葉を落とした木々の梢越しに白い雲を見上げるときに、突如過去に紛れ込んだような気分のすることがあります。そして今の季節、晴れた日に風の声を聞くと、やっぱりそんな気がします。

金色の光が水のようにあふれた秋の公園の記憶。
次いで、小学校で習った「まっかな秋という歌が、頭の中で自動再生されます。
「まっかだな、まっかだな」で始まり、ツタの葉っぱや、モミジの葉っぱや、夕焼け雲や、友達のほっぺたが真っ赤なことを明るく詠う曲です【YouTubeにLINK】。

真っ赤なものの中には、烏瓜もありました。
私が育ったのは街中ですが、近くにはカブトムシも採れるような大きな公園があって、上で述べた秋の公園というのがそれです。


そこにはちゃんと烏瓜もありました。
藪にぶらさがった烏瓜は、手入れのされない素の自然を、そして昆虫たちが暮らす環境の豊かさを象徴するもののように自分は感じていたと思います。いずれにしろ、西日に照らされた烏瓜の朱色は、穏やかで、一日がひどく長かった、平和な子ども時代の心象風景に欠かせません。


でも、烏瓜は摘んでもすぐに色あせてしまいます。あの美しさを保存するのはなかなか難しいようです。まるで人生のように…と言ってしまうと、ちょっと月並みな感じですが。そして記憶の中では、いつまでも美しく色鮮やかなままなのも、人生といっしょです。

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もうちょっとすると、野に出て落ち葉やどんぐりを拾うのが楽しい時期になってきますね。里では柿も色づいてくるでしょう。