花祭り2017年04月08日 12時36分04秒

何だか久しぶりの休日であり、久しぶりの記事です。
せっかくなので、雨に濡れた桜でも見ながらのんびり過ごそうか…と思いましたが、気鬱なニュースが紙面と画面を埋め尽くし、何をどう言えばいいのか途方に暮れます。

でも、ふと気付けば、今日は4月8日の花祭りですね。
釈迦が世界と衆生を救うために、ゴータマ・シッダルタとしてこの世に生まれたとされる日。

幼い釈尊に対する信仰は、幼な子イエスに対するそれと同様、「無垢にして無限の可能性を秘め、曇りなき叡智を持った存在」という、幼子が持つシンボリズムに基づくものでしょう。一言でいえば、幼子は人類の「希望」の象徴です。


いつものゴチャゴチャの中に置かれた誕生仏。


その瞳は静かに閉じられていますが、透徹した金剛の智は生死の間をはるかに超え、その意識は宇宙大に及びます。


仰ぎ見る幼子の姿。
左右の手で天地を指さし、「天上天下唯我独尊」を告げる、幼き釈迦如来。

   ★

「唯我独尊」というのは、本来厳かな意味のはずですが、世界には他者を見下す人が多いせいか、いつの間にか「独善的」と同義の、悪い意味で使われることが増えました。でも、独善が過ぎて、幼き者の前で素直に頭を垂れ、そこに一種の畏れや敬意を抱かない人がいるとすれば、その人はお釈迦様の境地から最も遠いところにいるのではないでしょうか。

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幼子に勇気をもらって、壊れかけた世界の中で「天文古玩」を再開します。

コメント

_ S.U ― 2017年04月08日 17時48分16秒

 お釈迦さん、花祭り、と来れば、甘茶ですね。
 子どもの頃は、この日は、毎年甘茶が飲めるので楽しみにしていました。祖母がお寺からもらって帰って飲ませてくれました。

 甘茶は年に1度しか飲めないのですが、別の時に飲みたいときはどうすればよいのだと尋ねますと、番茶に砂糖を入れればよいと答えました。それで、甘茶は番茶に砂糖を入れたものだと誤解してしまいましたが、甘茶が茶とはまったく別種の植物であることを後に知って驚くことになりました。

 あれやこれや思い出しながら、今日は誕生仏のお写真に合掌し、心の中で甘茶をかけさせていただきました。

_ 玉青 ― 2017年04月09日 13時27分59秒

S.Uさんの思い出には、お祖母さまにつながるものが多いですね。
S.Uさんにとって、お祖母さまは水木しげる氏における「のんのんばあ」のような存在だったのかなあ…と、身近にそういう人がいなかった自分としては羨ましいです。

偶然ですが、我が家でも昨日、「甘茶の原料は何だ」ということが食卓の話題に上りました。
で、それはアジサイの仲間であるということが分かり、「そういえば、昔、庭にアマチャを植えたことがなかったか?」という微かな記憶がよみがえり、庭を見に行きましたが、すでに影も形もなかった…というような、他愛ないやりとりがありました。

こういう平和が続くことを仏様に強く祈りたいです。

_ S.U ― 2017年04月10日 08時25分52秒

>「のんのんばあ」
水木先生のお宅に例えて下さるとは望外の幸福です。
 身内のことで恐縮ですが、私の祖母は、農業しかしたことのない特に個性も強くないような人でしたが、学校やお寺で聞いた話、本やテレビで知った話は、古今東西、宗教から科学までよく憶えていて、しょっちゅう私に教えてくれました。

>甘茶の原料
 アジサイのように一般家庭で栽培することもあるものなのですね。私は何となく山に自生しているものかと思っていました。しかし、お寺で花祭りに用いていて、自宅持ち帰りまで許していたとなると、寺で相当量の供給があったことになります。寺で栽培していたのか、思わぬところが気になってきました。

_ 玉青 ― 2017年04月11日 22時16分43秒

甘茶第2報です。もういっぺん庭を見に行ったら、他の木の陰に、細々と生き残っているのを発見しました。その場で若葉を噛んだら、なるほど確かにはっきりと甘みがありました。私はまだ本物の甘茶を飲んだことがないのですが、甘茶を製する過程で葉っぱを発酵乾燥させると、その甘味はさらに増すそうですから、飲めば相当甘いものなのでしょうね。

甘茶はガクアジサイの仲間で、侘びた風情がありますから、我が家では茶花にするつもりで植えたのですが、なかなか丈夫なもののようです。たぶんどこでも育つのでしょう。昔はあちこちに植えられ、村々で甘茶を自製していたと思いますが、今は長野や岩手あたりで、やや大規模に栽培されており、いつでも通販で買える…というのをさっき知りました。

_ S.U ― 2017年04月12日 07時29分59秒

玉青さんのお宅は、書斎のみならず、お庭も博物の宝庫であることが初めてわかりました。すばらしいです。さらに探索を進めれば、昭和天皇が著書にまとめた皇居の庭のようにいろいろ見つかるのではないでしょうか。

 長らく甘茶を飲んでいないので子どもの時の記憶に頼らざるを得ませんが、甘茶は番茶に砂糖を薄からず濃からずの適度に入れたものと比べて(これも甘茶の代用として子どもの時にやった)、色はどちらも同じ茶色、甘みも大差なし、本物の甘茶は砂糖より甘みがスッキリしているという感じでした。来年の花祭りには買ってみましょうか。

_ 玉青 ― 2017年04月13日 22時23分37秒

ありがとうございます。
一時、本気で庭に棲む生き物の目録作りを考えたこともあるのですが、やり始めると強迫的になりそうで、すんでのところで思いとどまりました。(^J^)

>本物の甘茶

わが家でも、ひょっとしたら湯呑一杯分ぐらいの甘茶なら自製できるかもしれませんが、いかんせん当家のアマチャは絶滅危惧種なので、ここは通販のお世話になるしかなさそうです。ちょうど誕生仏もおわしますし、来年の花祭りは自宅で祝えたら嬉しいですね。

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