甲府余談…胡蝶の教え2017年09月22日 07時11分53秒

年々歳々花は相似たり
歳々年々人同じからず

人間社会の移ろい易さと、自然の不変性――。
この詩句は古来多くの人の共感を誘ったことでしょう。
私も齢を重ねるにつれて、そうした思いに頻々と捉われるようになりました。

   ★

先日、甲府の武田神社で一服していたら、すぐ近くの地面に一匹の蝶が舞い降りて、吸水行動を始めました。それを見て「ん?」と、軽い違和感を覚えました。


「アゲハ?…じゃないよね…あれはいったい?」
不審の念に駆られて、パシャッとやったのが上の写真。

帰宅後にネットを見たら、その正体はすぐに知れました。
すなわち、アカボシゴマダラ

日本には、もともと奄美周辺のみにいたのですが、2000年前後に大陸産の別亜種が流入し(人為的放蝶が原因と推定されています)、現在、関東を中心に分布を拡大中の由。

私の昆虫知識はほぼ40年前で止まっていますから、その姿に違和感を覚えたのは当然で、むしろ「お前さん、まだまだオツムはしっかりしてるじゃないか」と、妙な自信を感じたぐらいです。

   ★

身近な日本の自然も、私が子供の頃に親しんだそれとは、既に異なるものとなっていることを、一匹の蝶に教えられました。そして、人為と自然は切り離せないし、自然は不変でもないことを痛感させられます。

さらに、こんなふうに「見慣れぬものの出現」は気づきやすいですが、本当は「見慣れたものがいつの間にか消えている」ことの方が、ずっと多いんだろうなあ…ということも思いました。ヒトの認識は、容易にそれに気づかないようにできているようです。

   ★

歳々年々人同じからず
年々歳々花もまた同じからず

ちょっと寂しい気もするし、少なからず不安も覚えますが、それが真実ならば受け止めるしかありません。それに、仮にヒトがいなくたって、自然の変化はやむことがないし、生物たちはそれぞれ進化の歩みを続けることでしょう。

コメント

_ S.U ― 2017年09月22日 17時46分41秒

私は鱗翅目は嫌いですが、嫌いな物だけに分類してすっきり収納しないと安心できません。
 お写真を見て、これが珍しいチョウかどうかはわからないのですが、アゲハチョウというよりタテハチョウだろうと思って、ご引用のWikipediaを見ると正解でした。私のオツムもまだ大丈夫か。

>「年々歳々花は相似たり」
 自然科学の視点から見ると、この「相似たり」というのが絶妙だと思います。決して「同じである」とは言っていない。どの程度似ているのか、と問えば、きっと「かなりよく似ている」という返事になるでしょう。でも、よく見ると違うかもしれないという含意もあるように思います。
 そういう意味では、昨日の人と今日の人は同じ人ではないけれども、その性格ややっていることはかなり似ているかもしれません。

 ところで、この詩は、紅顔の美少年が半死の白頭翁になることを唱っていますので、同じ人が老人になることを嘆いているようです。それだったら、花も個体としては枯れますので、少し比較がフェアでないように思います。

_ Nakamori ― 2017年09月23日 09時14分55秒

モニタリング=ある場所での変化を捕まえること、は簡単なことではありませんね。継続して見続ける必要がありますし、得られた情報を共有する必要があります。

この情報を共有する、ということに関して、日本人は不得意のように感じています。例えばイギリスでは、全国を網羅した生物の分布情報が数年おきに整理され、公表されていますが、日本はまだこのような状況にありません。

情報はある側面では武器となります。特にビジネスではそうです。それを得るために努力が必要ですし、投資もします。容易に公表できないのも理解できます。しかし、たくさん集めないと描けない絵があることも事実でして、なかなか厄介な問題だと感じています。

_ 玉青 ― 2017年09月23日 12時31分58秒

○S.Uさま

>少し比較がフェアでない

あはは、たしかに。
「時々分々花は同じからず」と言ってもいいですし、十年一日の我が身や、今も変わらず弱い者いじめに狂奔する為政者を見ていると、「年々歳々人は相似たり」の感慨がむくむくと湧いてきます。

○Nakamoriさま

この点については、お返事するだけの知識がないのですが、日本でも「○○ウォッチャー」を名乗る人はいろいろ多いんでしょうけれど、そこに組織的・面的広がりが欠けてるんでしょうかね。

_ Nakamori ― 2017年09月23日 15時34分52秒

〇玉青さま
ご返事ありがとうございます。〇〇ウォッチャーのことですが、例えば鳥に関して、モニタリングに参加している(あるいはしうる)人数をイギリスと日本で比較してみます。

イギリスでは40,000人を越えているようです。
https://www.bto.org/volunteer-surveys/taking-part/volunteering

日本では、例えばバードリサーチの会員数は2,000人と少しです。http://www.bird-research.jp/1_gaiyo/index.html

以上のことから、どうやらイギリスと日本では、鳥を見るだけではなく科学的に興味を持って見ている人間の数が一桁くらいは違っているようです。ご参考になれば幸いです。

_ Nakamori ― 2017年09月23日 16時15分31秒

すみません、つづきです。

情報の共有についてですが、日本の環境調査は、研究者&アマチュアによるもののほか、公共事業に関連して調査会社によって多くが実施されています。後者に問題がありまして、費用の元は税金であるのに、発注者(=役所)が情報を公開したがらない、という困った状況があります。本来であればさらに一歩進めて、「それらを統合して一緒に利用する」といった発想が必要と思われるのですが、まだまだ不十分です。何とかならんかなあ~。

長文失礼いたしました!

_ 玉青 ― 2017年09月24日 07時24分58秒

ご教示ありがとうございます。
絶対数で一けた違うとなると、人口比や面積比を考慮すると、一層脆弱な感じですね。
そしてまた不透明なお役所仕事。
構造的な問題もあるでしょうし、一気に改変するのは難しいかもですが、まずは問題の所在だけでも広くアピールしていかねばならないのでしょうね。

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